110番通報の「受け手」となる受理業務に、長く携わってきた。受理といっても、通報者の声に、ただ耳を傾けていればいい訳ではない。《現場はどこで、どんな状況にあるのか》。混乱状態かもしれない通報者から、顔が見えない中で声色だけで緊急性を判断し、迅速に情報を引き出さなければならない。
加えて、通報者とやりとりしながら手元のコンピューター画面に手書きする通報の内容は、リアルタイムで現場に画面のまま流されるため、読みやすさが求められる。もちろん通報者の意図をくみ取れなければ、取り返しのつかない事態を招く。間違えは許されない中で、1回の勤務で受ける通報は200~300件にも達し、精神的な負荷は計り知れない。
ただ配置転換を打診されたこともあったが、受理業務にこだわってきた。「都民の声を現場の警察官に届ける『架け橋』となる道を極めたい」と語る。
家計を助けようと職を探す中で、持ち前の体力を「生かせるのではないか」と警察官の職を選んだ。そのため将来を思い描くような「警察官像」はなく、真っ白な状態から経験を積んだ。振り出しは滝野川署。事件もほとんどなく、静かな街を巡回する度に「自分がこの平穏を守っている」と警察官としての自負が芽生えたという。だが、高齢女性が倒れてきたクレーンの下敷きになる事故が発生。現場での交通整理さえ満足にできない自分に歯がゆさを覚えた。
以来、目の前の仕事に精いっぱい取り組んできた。そして出合ったのが受理業務。「こんな業務が警察官にあることも知らなかった」というが、先輩が地図を片手に通報と「格闘」する姿に、なぜか、ひかれた。
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