フェンシングに水泳、馬術、射撃、ランニング…。それぞれ全く異質な5種目に挑み「キング・オブ・スポーツ」とも呼ばれる近代五種。東京五輪の種目の中でも「過酷」とされる、その競技(女子)初日の5日に、警視庁第4機動隊の高宮なつ美巡査部長(29)が臨んだ。「警視庁警察官の誇りを胸に精いっぱい頑張りたい」。持ち前の運動神経と正義感をぶつける舞台が始まった。(吉沢智美、宮野佳幸)
5日のフェンシング総当たり戦。キューバ選手との対戦では鋭く踏み込み、相手の右胸に剣先を突き刺した。勝利を決め、力強いガッツポーズ。初日は35戦中14勝を挙げ、27位の滑り出しとなった。
幼稚園に入る前から水泳を習い、中学時代はバスケットボール部に所属。幼い頃からさまざまなスポーツに触れてきた。中学3年の時には駅伝のメンバーに誘われ、埼玉県大会で10人をごぼう抜き。高い運動能力を見せつけていた。
進学した県立川越南高では陸上部に入部。800メートルと1500メートルの中距離を主に取り組み、1日に10~15キロも走り込むこともあったという。陸上部顧問の川島利明さん(65)は「練習で楽はせず、他の部員への気遣いもできた。だらけている部員は厳しく叱っていた」と振り返る。
卒業後は大学に進む予定だったが、警察官の父親が病気で体調を崩したことを契機に、警察官になる道を選択した。父親は「大変な仕事だから」と難しい顔をしたが、高宮の意思は変わらなかった。
そして、平成23年に警視庁に入った。警察学校時代に1500メートル走で女子の歴代1位の記録をたたき出し、近代五種にスカウトされた。父親が他界して、ふさぎ込んでいた母の朝長(ともなが)里美さん(60)を「励ますことができれば」とする思いから競技の道を歩み始めたという。
「まさかそんなことを始めるとは…」と里美さんは驚いたというが、着実に成績を残し、前回のリオデジャネイロ五輪も出場を果たすほど成長を遂げた。川島さんは「さまざまなスポーツに万能だった。これまでの競技経験がうまくいったのではないか」と話す。
リオ五輪は12位。高宮はそこでの引退も考えたというが、周囲の助言もあり「東京五輪でいろんな人に見てもらって感謝を伝えたい」と、今大会までは競技を続けることを決めた。
その後、結婚。今年6月には、恩師の川島さんに「(東京五輪を最後に)引退することが決まりました。区切りになります」と電話してきたという。川島さんは「応援しているから、悔いのないように」と教え子の背中を押した。6日は五種をこなす競技のメインとなる。里美さんも「思いっきり頑張れ」とエールを送った。
https://www.sankei.com/article/20210805-QD7DACX6ENNQVF22PMBH3DBGRI/?outputType=theme_tokyo2020