暴力団員が関与した特殊詐欺事件の被害者が、暴力団対策法の「代表者責任」に基づき暴力団のトップに対し損害賠償請求訴訟を起こすケースが相次いでいる。組員は詐欺グループを組織するのに暴力団の「看板」を利用しており、賠償責任はトップにある-という論理で、指定暴力団トップの責任が認定され、弁済を受けた事例も出てきた。今も被害が後を絶たない特殊詐欺の根絶や被害者救済への「妙手」として、関係者は期待を寄せる。
最高裁で判決確定
今年3月、特殊詐欺で現金をだまし取られた茨城県の女性らが指定暴力団住吉会の会長らに対し損害賠償を求めた訴訟で、最高裁は住吉会側の上告を退けた。代表者責任に基づく支払いを命じた判決が、初めて最高裁で確定した。
根拠となったのは、平成20年施行の改正暴対法で拡大・強化された、指定暴力団の代表者などに損害賠償責任を負わせる規定だ。加害者が指定暴力団に所属している▽暴力団の威力を利用して不法に資金獲得行為を行った▽不法行為と損害との間に因果関係が認められる-ことを原告側が立証すれば、不法行為への加担がなくても賠償責任を負わせることができる。
原告側の弁護団によると、今回の確定判決で認められた賠償額は、慰謝料などを含む計605万円。4月上旬には、住吉会側から原告2人に対し、実際の被害額に相当する500万円が支払われた。弁護団の篠崎和則弁護士は「事件の被害者が暴力団トップを相手に訴訟をするのは勇気がいる。暴力団に対する打撃になり、特殊詐欺撲滅への第一歩になった」と語る。
使用者責任では困難
ピラミッド型組織の暴力団では、末端組員が違法なシノギ(経済活動)で得た収益は最終的に組織トップへと上納される。直接の加害者である末端組員には十分な資力がなく、たとえ勝訴しても賠償の支払いを期待するのは難しい。
このため、民法にある「使用者責任」の規定を根拠にトップへの損害賠償請求訴訟が起こされてきたが、傘下の組員と組織トップとの間の指揮命令系統など内部事情を立証する必要があり、提訴のハードルは高かった。
代表者責任の規定にはこうした課題をクリアする期待が寄せられたが、当初は、みかじめ料の徴収や恐喝といった組織の名前で「脅された」事案が対象と考えられており、身分を隠して行われる詐欺などの「だまされた」事案に適用できるかは、法曹関係者の間でも意見が割れていた。
日弁連の民事介入暴力対策委員会で当時、規定の検討を重ねた宮嶋康明弁護士は「代表者責任自体が、すでに被害者に有利な規定。それをさらに拡大解釈するのは正直難しいと感じていた」と振り返る。
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