改正少年法で事件報道に変化? 18~19歳はどう報じられるか【コメントライナー】(27日)時事
未成年者が起こした事件は、少年法61条で実名報道が禁じられている。
これまで少年事件では、原則として実名が報じられることはなかった。「原則として」というのは、61条に罰則がないため、報道機関に対するある種の倫理的規定の意味合いを持ち、禁止は絶対的ではないと解されてきたからだ。
凶悪事件を起こした少年が逃走中で、さらに被害が拡大する恐れがある場合など、社会的利益が少年保護より優先されると判断され、実名で報道されたケースはあった。国内の各報道機関はおおむね61条を尊重し、少年事件は匿名というルールが定着している。
◆実名報道が可能に
先の通常国会で成立した改正少年法は、事件を起こした18、19歳を「特定少年」と位置付け、家裁から検察官に逆送する犯罪の対象を殺人、放火、強制性交などに拡大、厳罰化した。
来年4月の改正施行後は、20歳以上と同様に刑事裁判を受けることになり、起訴後は実名報道が可能になる。
諸外国の成人年齢が大方18歳であることなどから、わが国でも2016年に選挙権年齢が18歳に引き下げられ、22年4月には成人年齢を18歳にする改正民法が施行される。
これに合わせて、今回の少年法改正議論でも当初、18、19歳を20歳以上と同様に扱うことが提起された。
これに対し、現場で少年矯正に関わってきた元少年院長や元家裁調査官らが強く反対。日弁連も「可塑性の高い少年を切り捨てるな」と法制審議会で巻き返した経過があった。こうした少年の立ち直りを重んじる立場の人々は、施行後の運用を注視している。
この状況で真っ先に問われるのが、報道各社の対応だ。被告となった18、19歳を実名で報じるか、これまで通り匿名扱いにするかだ。
実名報道は法的には可能になるが、その実質的意味は社会的制裁に他ならない。保護を重視する少年法の理念に変更はないとする立場に立てば、従来通りの匿名報道を原則として続けることになる。
個別のケースで、凶悪性が高く社会的反響が大きい場合は、実名報道するケースも出てくるだろう。各社の判断が、匿名と実名に分かれることも頻発するかもしれない。
◆微罪匿名の流れ
米国のAP通信は6月16日、「微罪事件では容疑者の名前を報じない」との方針を発表した。その理由は、インターネットに名前が残ったままになることだ。
「酔っ払って起こした不祥事程度で、就職など立ち直りの機会を得るのに不利な影響を与えることはないようにすべきだ」というのが同社の説明。
いったんネット上に容疑者として名前が報じられると、ニュース配信元が削除しても、消し切れないのが普通だ。APは殺人などの重大事件については実名報道を続けるというが、微罪事件ではネットの闇が匿名報道を拡大する結果になった。
このAPの判断は、世界の報道機関に影響を与える可能性がある。日本では、特定少年の事件報道の在り方が問われる中、報道各社が微罪事件は匿名にする流れが一気に広まることもあり得るのではないか。
もちろん、報道素材を提供する警察などの公的機関の発表は実名、各報道機関の判断によって匿名化するーこの大前提は不変であるべきだ。
(時事通信社「コメントライナー」2021年6月22日号の記事を一部修正しました)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021062500747&g=soc
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