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2019年10月11日 (金)

北工作員遺体漂着の「能代事件」 元捜査員が初証言 「恐怖で震えた」(11日)産経

秋田県能代(のしろ)市の日本海沿岸で昭和38年4月、男2人の遺体が見つかった。北朝鮮工作員が密入国を図った「第1次能代事件」で、現場を最初に調べた元刑事が報道機関の取材に初めて応じた。県内では工作員による拉致が疑われる失踪者もいる。「拉致は、今も続いている問題」-。元刑事は被害者の帰国を願い、事件を語り継ぐ決意だ。(中村翔樹、写真も)
 ■震える恐怖
 秋田県北部の能代市中心街から南に約6キロ。日本海に面した「浅内(あさない)浜」に県警能代署の刑事だった伊藤京治さん(82)が到着したのは、4月1日午前4時ごろだった。
 “不審なゴムボートが漂着。そばに2体の死体らしいものがある。現場へ向かえ”。
 エープリルフールの未明に電話でたたき起こされ、からかわれていると思ったが相手の声は「嘘じゃない。これから全員に招集をかける!」とうわずっている。現実と悟ったが、「北朝鮮工作員の可能性もある」と付け加えられた情報は、にわかには信じられなかった。
 署の捜査係に配属されたばかりだった25歳の新米刑事の現場経験は、強盗や暴力団関係、交通事故などにとどまる。「夢であってほしい」。寝室から警察手帳と懐中電灯だけを持ち、スクーターで沿岸を飛ばした。
 現場には単一色の軍服を着た2人の男が倒れていた。1人はボートに上半身を入れて横向き、1人は浜辺にうつぶせだ。ボートの男の腰のあたりからは拳銃の持ち手部分がのぞいている。工作員だと直感した。
 「死んだふりをしているのではないか。周辺に仲間が隠れているのではないか」。そう思うと身体がこわばる。風に揺れる木々のざわめきが、工作員が飛び出してくる音に聞こえた。震えを抑えながら男らの口元に手を近づけ、呼吸を確認した。
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