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2011年12月24日 (土)

キセルで逮捕された過激派 行き着く先は(24日)

【衝撃事件の核心】

 今月18日、新入生勧誘活動のためにキセル乗車で電車移動を繰り返していたとして、革労協反主流派の活動家ら2人が警視庁公安部などに逮捕された。捜査関係者らによると、2人は活動拠点のマンションに寝泊まりし、アルバイトをしながら活動していたという。ゲリラや凶悪事件をたびたび起こしてきた過激派は依然、恐ろしい組織に違いないが、時代の流れとともに資金源も先細りになり、存在感も失いつつある。革命を志してきた過激派が、現代社会で行き着く先は…。

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記事本文の続き ■過激派拠点に出入りしていた男を尾行すると…

 平成22年5月、東京都台東区根岸のJR鶯谷駅内の乗車券売り場で、警視庁公安部の私服捜査員は、1人の男の動きに、人影から目を光らせていた。

 男は45歳。以前から革労協反主流派の活動拠点に出入りしており、活動家の疑いがあるとして、公安部にマークされていた人物だ。

 男は、近隣駅までの乗車券を買い、自動改札機を通り、電車に乗る。私服捜査員も、その後を追って電車に乗った。乗車券から推測すれば、男はすぐに電車を降りるはずだが、電車はどんどん北上し、東京を出た。

 「安い乗車券で、一体どこまで行こうというのか…」。男はなんと、東京から約2時間かかる宇都宮駅まで行き、そこで降りた。精算機の前には立ち寄らず、ポケットから何かチケットのようなものを取り出し、自動改札機を通過した。

 「あれはなんだ」

 捜査員は、首をひねった。

 調べると、男が改札機に入れたチケットは、近隣の230円区間の回数券だった。男はキセル乗車で、宇都宮まで移動したのだった。

 通常、改札を入った記録のない乗車券などでは、自動改札機を出ることはできない。しかし、この回数券は、自動改札機のない駅の利用者のために発行されたものだったため、通過できたのだった。

 

■東京から宇都宮へ 新入生“獲得”活動

 男が向かった先は、自分の出身大学である宇都宮大学。そこでビラを配るなどして、新入生の勧誘活動をするため、東京からキセル乗車でやってきたのだった。

 公安部はこれをきっかけに、男への極秘捜査を本格化した。その結果、何度も宇都宮と東京の間をキセル乗車で往復した容疑を確認。仲間とみられる革労協反主流派の活動家、中沢康一容疑者(42)も同様の行為を繰り返していた容疑を確認したため、今月18日、電子計算機使用詐欺の疑いで逮捕した。

 逮捕容疑は、平成22年6月21日、東京~宇都宮でキセル乗車し、同28日にも同様の手口を繰り返し、正規の運賃との差額6360円をだまし取るなどしたという内容。

 捜査関係者によると、2人は5~6月、たびたび宇都宮大学に行って、ビラを配るなどして、入学したばかりの“純粋”な大学1年生に近づき、組織に取り込もうとしていたとみられる。

 ■真面目な学生が気が付いたら過激派に 大学内に潜む危険

 「学生運動」という仮面をかぶった過激派活動家の新入生“獲得”活動はどういうものなのか。

 「過激な活動は、多くの学生には受け入れられない。だからはじめは、過激派と分からないように近づく」

 ある公安関係者は、こう解説する。

 かつて、各地の大学では、過激派が関与したとみられる政治的スローガンの立て看板がよくみられた。学内では半ば公然と、過激派に影響を受けた学生たちが活動するなどの実態もあった。しかし、最近では、各大学でこうした活動を排除する動きが進んでいる。

 そこで活動家たちは「過激派」という身分や過激なスローガンを隠して、学内に入り込み、勧誘活動をすることが多いという。

 公安関係者によると、代表的なのは、大学の雰囲気に酔っている新入生に「反原発」「沖縄の米軍基地反対」など、注目されている社会問題のパンフレットなどを配り、興味を引くという手法だ。新入生が関心を示すと、「この問題をテーマにした映画の上映会があるので、来てみませんか」などと誘い、徐々に自分たちの思想に染めていき、組織に引き込んでいくという。

 「善良で、真面目な学生が、気が付いたら過激派の思想を信じ込み、組織のために活動しているということがある」

 ある公安関係者は話す。

 ■世界革命を目指す極左暴力集団“武闘派セクト”

 一般に「過激派」とは、共産主義・社会主義を信奉し、世界革命実現のために暴力的手段も辞さない「極左暴力集団」のことを意味する。昭和30年代初めに、日本共産党との活動路線の違いなどから誕生したといわれており、これまでに多くのゲリラ事件や凶悪事件を起こし、死傷者を出してきた。

 過激派は「セクト」と呼ばれるいくつもの組織に分かれ、互いに対立していることが多い。革労協は中核派、革マルと並ぶ「三大セクト」の1つだ。正式名称は「革命的労働者協会」。時限発火装置や爆弾、迫撃砲などの武器を用いた過激なテロ攻撃で知られており、最近ではもっとも暴力的な武闘派セクトといわれている。メンバーの数は諸説あるが、100~400人とみられている。

 革労協内部で「内ゲバ」と呼ばれる暴力的な路線闘争も繰り返しており、現在は主に主流派と反主流派にわかれている。警視庁関係者によると、中沢容疑者らが属する反主流派は、特に過激な行動を繰り返している。

 ■アルバイト、資金源先細り…過激派も楽ではない?

 そんな同派の“コア”なメンバーだったとみられる中沢容疑者ら。なぜ、キセル乗車の容疑で逮捕されるようなことになったのか。

 ある捜査関係者は「過激派も昭和50年代以降、支援する者は減っていくばかり。カンパも機関紙の売り上げも落ちて資金源は先細りだ。活動も生活も楽ではないのではないか」と分析する。

 捜査関係者によると、中沢容疑者は普段、高齢者介護のアルバイトをしながら、組織活動を行っていた。寝泊まりする場所は同派の拠点がある台東区のマンションの1室。家族はおらず独身だったという。

 もともとは明治大学の学生だった。「大学時代は青白い顔できまじめそうだった。でも授業に出ることはほとんどなく、間もなく姿を見せなくなった。あの後、過激派にとりこまれたのだろうか」。学生時代の知人は、こう話す。

 警視庁公安部によると、中沢容疑者らは調べに対して黙秘しているという。

 「生活は楽ではなかったのかもしれないが、革命を起こすためにキセル乗車をしていたとしたら、あまりにセコイではないか」。ある捜査関係者は、こう苦笑した。

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