【社会部発】同姓同名ゆえの「被害」(10日)
9日午前、大阪本社で1人の女性の訪問を受けた。7日付朝刊(大阪本社管内、一部地域は夕刊)に載った小さな記事の、大きな“被害者”だ。「女性の口の中に指を入れたとして、暴行容疑で男を逮捕」という事件の被疑者、大阪市大正区三軒家東の自称大学生、姫野翔(しょう)容疑者(21)と住む地域も、大学生ということも、名前の字句も、年齢まで一緒という男性の母親だ。
男性の名前は「翔」(つばさ)で容疑者とは読み方が異なり、通っている大学も別なのだが、記事には読み方も、通っている個別の大学名も掲載されておらず、見る限り違いは分からない。こんなこともあるのかと驚いた。
母親は「大学が違うと分かるだけでもいいので、容疑者の大学名をもう一度報道してもらえないか」と訴えた。警察にも同様の要望をしたが、母親の話では「こちらからは広報できないが、今後は別人がいることに配慮します」という内容の答えだったという。
憔悴しきった様子の母親は、インターネットの掲示板を印刷した紙を持っていた。特殊な内容の事件であるため話題となり、一般的な情報の中から、確認されないまま男性の情報が取り出され、容疑者であるかのように掲載されていた。
母親は「報道された容疑者と息子は別人」とする書面をつくり、住んでいるマンションの世帯各戸に配ったという。大学生なら、本来は研究や就職活動などに忙しいであろう時期に、全く言われのない被害である。
6日夜の社会部の担当デスクだった。当然、記事のことも記憶に残っている。先に対応してくれていた別のデスクと、母親の話をじっくりと聞いて、考えた。容疑者が起訴などの刑事処分を受ける際に改めて容疑者の大学名などを報道することも考えたが、確実とはいえず、時期も遅すぎるかもしれない。上司にも相談した。この話自体は「ニュース」ではないが、男性や家族も事件の「被害者」だ。そう考えて出した「答え」がこの社会部発だ。
何度も繰り返されてはいるが、インターネット上で情報を取り扱う人は、自分の無責任な情報が人を傷つける、ということを知ってほしい。当然、情報を最初に発信した私たちも、その“重み”を改めて肝に銘じなければならない。
男性は今も、積極的に大学に通っているという。「大学に本人がいるということが、『無実の証明』だと思っているようです」という母親の言葉に、少しだけ安心した。(広瀬一雄)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110609/crm11060923450029-n2.htm
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