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2011年3月 5日 (土)

どう考える警察官の拳銃使用 一審無罪の控訴審(5日)

【日本の議論】 奈良県大和郡山市で平成15年、逃走中の車に発砲し助手席の男性が死亡した事件で、殺人罪などに問われている県警の警察官2人の審判は裁判員裁判の対象となっている。審判では発砲が違法か否かと、殺意の有無が争点になる。市民を守るために現場に立つ警察官にどこまで拳銃使用を認めるのか。この重要な問題について市民自身が基準を示すという意味でも、注目を集める審判になりそうだ。(高久清史)

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記事本文の続き ■猛スピード、車と衝突…20キロの逃走劇  男性2人が乗った乗用車が通行中の車と次々と衝突しながら猛スピードで逃走を続けた。大和郡山市で15年9月、車上狙い事件の容疑車両だった乗用車がパトカーに追跡された。カーチェイスは約20キロに及んだ。

 県警などによると、乗用車は同市内の国道でパトカーや一般車両に挟まれて停止した。だが乗用車がさらに急発進を繰り返したため、警察官3人が計8発を発砲。助手席の男性=当時(28)=が死亡し、運転席の男性も負傷した。

 運転席の男性は窃盗罪などで有罪判決を受け、死亡した男性も窃盗などの疑いで被疑者死亡のまま書類送検された。

 助手席への発砲は違法で危害を加える意図があったとして、遺族の母親は同年11月、発砲した3人と、発砲を命令した警察官1人について殺人と特別公務員暴行陵虐致死罪で奈良地検に刑事告訴した。だが地検が不起訴処分にしたため、付審判制度に基づき、4人について審判を開くよう奈良地裁に請求した。

 警察官の暴行など公務員の職権乱用が疑われる事件を検察が不起訴にした場合、告訴、告発人は審判を開くよう地裁に請求できる。地裁が請求を認める決定をすれば起訴と同様の効力を発揮して審判が開かれ、地裁が指定した弁護士が検察官役を務める。

 地裁は4人のうち、死亡した男性を撃った萩原基文被告(34)=当時巡査部長=と、東芳弘被告(34)=同巡査長=について特別公務員暴行陵虐致死罪などで審判に付すことを決めた。さらに、今年1月には殺人罪も訴因に加えて審理することを決定し、裁判員裁判の対象となった。

 警察官の拳銃使用の要件は警察官職務執行法などにより規定されており、最近まで拳銃使用は「最後の手段」と位置づけられていた。その規定は警察官たちの殉職を経て緩和された。

 ■白昼の商店街で刃物男に刺殺される  「警察官の銃があくまでも防護的にしか使えないようになっているのが本当にいいのだろうか」

 平成13年8月28日、当時の村井仁国家公安委員長が閣議後の会見で拳銃使用に関する規定を見直す必要があるという考えを示した。この年、警察官の殉職が相次いでいた。 

 4月、宇都宮市内の会社事務所で、散弾銃を持って押し入った男を取り押さえようとした宇都宮中央署員が撃たれて死亡。6月には埼玉県三芳町のアパートで、男女間のトラブルの仲裁にあたっていた東入間署員が男に包丁で刺されて死亡した。

 さらに8月26日昼には東京都世田谷区の商店街で、刃物を持ってうろついていた男ともみ合いになった世田谷署員が首や胸、背中など数カ所を刺されて死亡した。署員は「止まらないと撃つぞ」と警告した後、男に襲われた。

 警職法7条では武器使用の条件として、「犯人逮捕や逃走の防止、自己または他人に対する防護などのため必要であると認める相当な理由のある場合」と規定。これに加えて、国家公安委員会規則の「警察官けん銃警棒等使用および取扱い規範」では「警棒使用など他の手段がないと認められるときは、最少限度においてけん銃を構え、または撃つことができる」と定めていた。

 警察庁は「現場の警察官が拳銃使用を『最後の手段』ととらえ、過度に抑制的になっている」として見直しに着手し、同年11月に改正。警棒に関する規定を別の規範に定め、「警察官等けん銃使用及び取扱い規範」に改めた。

 この改正で警棒などが拳銃より優先するとの規定を削除。拳銃使用の判断基準を分かりやすくするため、「取り出し」「構え」「威嚇(かく)射撃等」「相手に向けて撃つ」の四つに分けて、それぞれについて判断の準則や留意事項を規定した。事態が切迫した場合には予告や威嚇射撃なく相手に向けて撃つことができることも明確化させた。

 ■「警察に何を求めるのか」市民が判断する場に  「発砲行為の目的は被害者から自分の生命、身体の安全を守ることにあったことは明らか」

 「警棒で対抗したり、応援を待たなければ、ただちに本件発砲行為が違法となるものではない」

 今年2月10日の宇都宮地裁。平成18年6月、職務質問中に抵抗して石灯籠の宝珠を振り上げた中国人男性=当時(38)=に拳銃を発砲して死亡させたとして、特別公務員暴行陵虐致死罪に問われた栃木県警の巡査長、平田学被告(35)の審判の判決で、同地裁(佐藤正信裁判長)は発砲を正当行為と認定して無罪を言い渡した。その後、検察官役の弁護士が判決を不服として東京高裁に控訴している。

 判決では、宝珠は重量が約2・85キロで打撃による威力が高いこと▽拳銃を構えた被告に後退を余儀なくさせた被害者の抵抗の激しさ▽突然行われた宝珠による攻撃を回避する時間的余裕がほとんどなく体力的にも相当困難なこと-などについて細かく指摘した上で、発砲が警職法の要件を満たしていると判断した。

 奈良の審判でも同様に警職法と照らし合わせるなどしながら、裁判員たちが警察官2人の拳銃発射が殺人罪などに該当するか判断を下すとみられる。

 渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)はこの審判を「治安が悪化する中で、犯罪から市民を守る責任がある警察官に対して何を求め、何を許すのかを市民が判断する場になる」と位置づける。

 その上で「警察官が8発も発射していることから、よほど緊迫した事態だったと思われる。警察官の弁護側にとっては写真、図面、証言で当時の現場の緊迫感をどこまで伝えられるかがポイントとなるだろう」と話している。

 

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