いじめによる自殺や学校での事件事故で子供を失った遺族、重い後遺症を負った被害者らを対象にしたアンケートで、約8割の家族が学校側から詳細について自発的に説明してもらえなかったと答えた。調査を実施したNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」(川崎市、小森新一郎代表)は7日に調査結果を公表し、近く文部科学省に対して学校や教育委員会の対応改善を求める要望書を提出する。
調査は、92~09年にいじめや暴力、教師の体罰などで子供を亡くした遺族や、身体的な傷を負ったりPTSD(心的外傷後ストレス障害)などの後遺症が残る被害者の計110家族を対象に今年2~9月に行い、遺族38家族を含む51家族が回答した。
回答者の約8割に当たる41家族は、事件や事故の経緯や詳細について学校や教育委員会から自発的な説明を受けなかったと回答。このうち14家族は「いまだに説明がない」と答えた。学校や加害者らから謝罪を受けたのは13家族にとどまった。
一方、学校が教育委員会に提出する事故報告書に関して、コピーを受け取るなど何らかの形で内容を知ることができたのは7割強の38家族。その場合でも報告書の中身について「重要な情報が抜け落ちていた」「一部または大部分にうそがあった」(複数回答可)という回答がいずれも22家族あり、6家族は「黒塗りが多く内容がほとんど不明だった」と答えるなど、学校に対する遺族らの不信感が浮き彫りになった。
文科省の調査では、小中高校生の自殺は近年、毎年150人前後で推移している。このうち教育委員会がいじめによる自殺と報告したのは毎年数人で、6割前後は「原因不明」。群馬県桐生市で10月に小学6年生が自殺した際も「いじめが原因」と訴える家族に対し、学校側は「いじめという認識はなかった」と主張するなど、多くのケースで遺族と学校側の受け止め方に隔たりがあるのが現状だ。
高校生の長女をいじめ自殺で亡くした同NPOの小森美登里理事は「再発防止対策を講じるためにも親と学校が情報を共有し、協力していかなければならない。国はそうした仕組みを作ってほしい」と訴えている。【井上俊樹、高橋咲子】
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20101104k0000e040055000c.html