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2010年7月17日 (土)

【物來順応】前警視総監・米村敏朗 逆境の文化と角界(17日)

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角界が野球賭博で揺れている。そこで、少しこの問題について考えてみたい。

 平成元年3月、私は3年間の海外勤務を終え帰国した。そのころ、日本の土地ブーム、株ブームは在外の日本人社会でも話題となっていたが、帰国してそのあまりの高騰ぶりに驚いた。またあるとき、大手銀行の幹部の方と話していて、「日本は土地本位制ですよ」とこともなげに言われて唖然然(あぜん)とした。確かに地価は上がり続け、株価も天井知らずとなり、この年、日経平均株価大納会で3万8915円の最高値を記録した。しかし、翌2年になると土地や株の相場は揺れ動くようになり、後から考えるとここから「バブルの崩壊」が始まった。

 ちょうどそのころ、デイビッド・ハルバースタムの著書「ネクスト・センチュリー」を読んで、改めて日本の経済発展について考えさせられた。同書は、21世紀を前にして「アメリカの世紀」が終焉(しゅうえん)を迎え、さりとて新しい世紀にむけた新たな英知が見いだせないアメリカの苦悩を描いたものだ。だが、私が最も関心を持ったのは、戦後の日本が全くの荒廃の中から世界中がうらやむほどの経済的豊かさを築き上げた、その成功要因について触れた部分である。結論として本書の訳者、浅野輔氏がまえがきで要約しているところを引用するのが最も適当であろう。

 すなわち、「これまで日本の成功を支えてきた逆境の文化とそれに付随する教育と規律と犠牲的精神が、あらたに手に入れた豊かさの中で、今後も発揮されるのだろうか。日本もまた、次の世紀をどう生きるのかという深刻な問題に直面している」。

 逆境の文化とは何か。あれこれ考えて思い至ったのが「おしん」である。昭和58年4月から1年間にわたって放送された「おしん」は平均視聴率52・6%、最高視聴率は62・9%に及んだ。言うまでもなく、いかなる逆境にあっても決してくじけず、しっかりと地に足をつけて節度をもって一歩ずつ成長していくおしん、あくまで自助、自分で活路を見いだしていくおしんの姿に多くの国民が共感を覚えた結果である。いみじくも「おしん」が終わるとともにバブルが始まった。そして、バブル崩壊の後「失われた10年」を経て21世紀の今日に至るまで、逆境の文化が軽視される中で日本は依然として漂流を続けている。

 さて角界の問題だが、私はかつて警視庁の機動隊長をしていたとき、柔道の猛者連中を連れて近くの相撲部屋を訪れ、中学校を出たばかりかと思う力士の卵と組んだが、次から次とあっけなく敗れた。そして、取り終わって周りから怒声を浴びながら言われるままに黙々と立ち働く少年の姿に、心から声援を送った。

 「富も名声もすべては土俵の土の中にある。欲しければ闘って勝ち取れ。そのためにはあらゆる試練に耐え、日々精進すべし」。それが常識であったはずだ。まさに逆境の文化であり、それゆえにこそ日本人の美意識に訴え、国技の国技たる所以(ゆえん)があったのではないか。バブルならぬアブク銭はまったく無縁のものである。「角界よ、お前もか」では困るのだ。いま一度、原点に立ち返る覚悟が求められる。活路はそれしかない。(よねむら としろう)

 

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