足利事件、一部先走った報道 本紙新ガイドラインで検証(24日)
高裁が23日、再審開始決定を出した足利事件。菅家(すがや)利和さん(62)は逮捕から17年半余りを経て、無罪となる公算が大きい。捜査機関だけでなく、当時の産経新聞にも菅家さんを犯人視する報道はなかったか-。裁判員制度開始を前にした今年2月に、産経新聞が策定した事件・裁判報道ガイドラインに照らして検証した。
■捜査情報 ガイドラインでは、捜査情報について「犯人視しない報道」の徹底を掲げる。容疑者の供述、証拠などの捜査情報は、できるだけ出所を明らかにし、情報が絶対的ではないということが読者に伝わるよう、書き方の工夫を求めている。菅家さん逮捕を報じた平成3年12月2日の朝刊は、捜査本部への取材に基づき「首を絞めて殺した」と自白していると報道。それ以降も、捜査本部の会見での発言をもとに「(女児が)かわいかったので、自転車に乗るかいと声をかけた」などの供述を掲載した。家宅捜索で自宅に「幼女趣味のビデオテープや写真集が散乱」しているのが見つかったと報道した翌日、捜査本部が押収したビデオが「幼女を扱ったビデオではなかった」と修正するなど、女児との関係性を求めるあまり、先走ったとみられる報道もあった。
■プロフィル報道 ガイドラインは、事件背景を理解するために容疑者のプロフィルを報道する場合、情報の出所を明示し、犯人であるとの印象を植え付けないよう書き方を工夫するよう定めている。3日付朝刊では、菅家さんが働いていた保育園の園長の「勤務態度はまじめで1年間無遅刻無欠勤だった」という話を掲載。一方、「園児らに接する態度が時折不自然だった」(3日付朝刊)「今思うと背筋が寒くなる」(2日付朝刊)など、菅家さんが犯人であるとしたような意見も紹介していた。逮捕前年に複数の女性に求婚し断られていたことなど、事件と直接関係ない恋愛歴も取り上げていた。
■識者コメント 3日付朝刊では犯罪社会学などのコメントを掲載。菅家さんの生い立ちや性格を、小児への関心の高さに結びつけて分析していた。これは、菅家さんが「『いたずらをしようとした』と供述した」という捜査本部の発表に基づき、背景を探ろうとしたものだった。だが「保育園送迎バスの運転手」という職業について、「小児性の表れ」と評したものもあった。ガイドラインでは、識者コメントに関しても、「逮捕容疑が事実とすれば」といった断りを入れるよう求めている。
■DNA鑑定の信用性 今回、再審決定の決め手となったDNA鑑定については2日付朝刊で「指紋制度導入以来の『捜査革命』」と紹介。一方、翌3日付朝刊の「主張」欄では、指紋鑑定とは違い、100%の確度は得られないことから「いまの技術では絶対的なキメ手にはならず、補充証拠として使われるのが妥当」とした上で、「地道な捜査による証拠の積み重ねを忘れないように願いたい」と締めくくっていた。今後は、こうした鑑定、分析手法を報道する際も、より慎重さが求められることになるだろう。
◇ ■産経新聞の事件・裁判報道ガイドライン 裁判員制度開始を前にした今年2月に策定。事件報道について、国民の知る権利に応える一方で、読者に過度の予断を与えないような報道を基本にするとしている。その上で「捜査情報」「プロフィル報道」「識者コメント」などの留意点を挙げている。http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/trial/269798/
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