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2009年6月28日 (日)

再審開始 足利事件18年目の真実 当初から『犯人視』報道 本紙の検証(28日)

「足利の幼女殺害自供 元運転手を逮捕」「栃木県警 他の3件追及へ」。栃木県足利市で当時四歳の女児が殺害された事件で、東京新聞は一九九一年十二月二日の一面トップで菅家利和さん(62)の逮捕を報じた。

 社会面では「DNA鑑定が決め手」の見出しで「一時は迷宮入りをささやかれた事件を解決に導いたのは、DNA鑑定という先端技術だった」と伝えた。当時の鑑定はまだ精度が低かったが、記事には「DNA指紋とも呼ばれる」と過大評価する表現もあり、精度への疑問を指摘する視点はなかった。

 逮捕後は菅家さんの供述内容を詳細に報道。「いたずらしようとした時に、騒がれては困ると思って殺した」「殺したことを話す勇気がなかった。しかし、被害者の霊に申し訳ないとわびる決心がついたので、正直に話します」などと、捜査本部の発表をもとに「自白」に至った経緯や動機などを報じた。また、菅家さんの自宅などから押収されたとして、「少女写真、ビデオ収集」と大きく報道。捜査本部は、押収したのは成人対象ビデオで、少女ビデオなどはなかったと訂正したが、小さな記事だった。

 勤務先だった保育園の取材では、ある母親の「あんなことをやりながらも子どもたちの送り迎えをやっていたと思うと、本当に恐ろしい」との感想を掲載した。菅家さんは同月二十一日、殺人などの罪で起訴された。二十二日付の新聞では「2幼女殺害も供述」と菅家さんが足利市内で起きた未解決事件二件も自分がやったと供述したことを一面で報道した。 しかし、この二件は「自白しか証拠がなく、起訴するのは無理だった」(当時の検察幹部の証言)。結局、大々的に報じられた未解決事件への関与は不起訴になっている。菅家さんは釈放後、三事件すべてがうその自白だったと語っている。

 東京新聞(中日新聞社)が今年三月から実施している「事件報道ガイドライン」は、無罪推定の原則の尊重をあらためて強調。犯行を認めていても「不当におとしめることは許されない。近所の人の憶測を裏付けなしに記事にせず、情報の出所を示して、信頼できる情報を節度を持って書く」と定めている。約十八年前の記事を現在のガイドラインと照らし合わせると、当時の報道は菅家さんを「犯人視」する報道に満ちていたと言わざるを得ない。

 菅家さんの裁判は二〇〇〇年七月、最高裁が上告を棄却、無期懲役が確定した。一九九二年二月の初公判から確定までの間、菅家さんや弁護団の無実の訴えに正面から向き合い、きちんと取材しようという姿勢が本紙には足りなかった。菅家さんは無実だという視点から、捜査の矛盾点などを継続的に報道してきたのはフリージャーナリストと民放テレビ局の記者だった。菅家さんの再審開始の決定は、司法の敗北であると同時に、大手メディアの敗北でもある。 =おわり (この企画は瀬口晴義、荒井六貴、横井武昭、佐藤直子が担当しました)Head_logo1_2 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009062802000053.html

 

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