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2009年6月19日 (金)

連載小説警視庁薬物特命捜査官(59)

    中国公安部の連携
080713_164028_m  東京・霞が関のある庁舎で極秘会議が開かれた。九州西南海沖における北朝鮮工作船に絡む殺人、漁業法違反事犯の関連捜査をしている警察の全体会議だった。会議には警視庁をはじめ大阪府警、新潟県警、宮城県警、鹿児島県警など三十六都府県警の刑事、生安、公安関係の担当者が集められた。警察庁からは関係局長、担当課長、理事官など幹部が出席している。
 各県警が担当している捜査の途中経過等が報告され、警察庁からの最終的な詰めも行われた。さらに、総合調整という名のもとで、お互いに情報を交換する場でもあった。これは〝事案の可能な限りの一本化〟という捜査方針に基づくもの。背景には将来、予想されるだろう広域かつ多様な各種犯罪に向け、日本警察の威信をかけた捜査の総合演習でもあった。
 特に注目されたのは、中国公安当局との犯罪捜査協力の進展。日本と米国、日本と韓国の間では、相互に犯罪人引き渡し条約があり、罪種によっては外国人被疑者の引き渡しが行われる。
 しかし、条約の締結がない国々では、自国民が犯人と特定された場合、お互いに不利になるような扱いを避けるため、罪はおろか捜査の力は及ばないことになっている。
 犯罪のグローバル化が進み、国境を越え、マフィア同士が手を結び組織化する。さらに罪種は窃盗や強盗・殺人だけでなく、それらの犯罪に薬物が絡んだり、銃器や兵器等の取引も絡むなど複雑化。
 新たなインフラとしてはインターネットや携帯電話という通信手段が登場するなど、これまでの捜査手法では追いつかない状況になってきた。
 日本国内では来日外国人犯罪が急増し、特に近年は中国人によるそれは組織化。つまり日本の暴力団と手を組むなどの緊急かつ重大な局面を迎えているのが現状だった。
 中国、韓国、ブラジル、イランなど各国の犯罪者が手を組むという国際的な組織化も一段と進み、犯罪収益金も金融機関の国際化も手伝ってそれぞれの国内で分配が可能な時代にある。
 このため日本警察庁は、中国公安部と連携をとる必要があるとし、この数ヶ月間で国家公安委員長をはじめ警察庁長官も中国を訪れたほか中国からも公安部の幹部が来日するなど犯罪捜査面での協力関係は、急速に進展した。
 そのような状況のなかで、北朝鮮の日本に対する国家的な犯罪に対応するためとして、捜査員を中国に派遣し同国の捜査機関である公安部の協力が得られたということは、歴史的にも意義が大きかった。
 

 

 日中両国は身柄引き渡し条約がなくても、それぞれの国で「国外犯」を適用して逮捕、それぞれの国の法律に照らして罰することも可能になったのある。
 中国の海南商会と梁伯一の捜査のため北京に派遣されていた伊藤特命捜査官が帰国。その結果が報告された。伊藤からは、次のような注目される言葉が飛び出した。
 「現地の公安部も、自国内における覚せい剤など薬物対策を強力に進めていることもあり、非常に協力的でした」
 「例の四葉銀行関係の解明に必要な日本関係者についてですが、公安部は海産物関係取引で親交がある中東貿易協力会の会長である穴守敬二郎が重要な役割を果たしていると見ております」
 伊藤はさらに続けた。
 「以前から取引はしていたが七、八年前にフィリピンで開かれた民間人の中東貿易会議で直接会ってから、二人の間で北朝鮮をネタにした金儲け案が浮上したそうです。話しを持ちかけたのは、梁が北と貿易交流があることを知った穴守からだったということです」
 伊藤は説明しながら、数枚の写真を出した。一枚は梁と穴守のツーショットの写真。フィリピンでの会合を終えた後、穴守が海南商会を訪れた際に撮影したものだという。
 数枚は日本宛に発送するために梱包にされた小包の写真。宛先に「日本国・中東貿易協力会、穴守敬二郎会長」の文字が見えた。さらに小包を開封した中身の写真があった。中身は白い粉で、中国公安部が日本に発送する寸前に押さえたものだという。
 「中国当局は、日本からの連絡で口座関係を調べると同時に、海南商会を手入れをして事件化したもので、小包の中身は覚せい剤でした。日本警察当局が必要なら捜査資料は提供するが梁の身柄は渡せない。なぜなら自国で罰するからだという」
 伊藤はさらに続けた。
 「中国の公安当局の事情聴取に立ち合ったと言うよりは、司法警察官の私が梁から直接、事情聴取を可能にしてくれました。その調書がこれです」
 過去に、国内に潜伏していた北朝鮮の工作員に日本人が拉致された事件があった。この事件で犯人と特定した人物が、実は韓国警察当局にスパイ容疑で逮捕されていた。
 日本警察がこの人物を拉致犯人として逮捕するためには供述調書が必要だった。そこで韓国警察当局の取った聴取書の翻訳で可能かどうか検討されたことがあった。結果は法的価値がないと判断された。
 警察庁の重森薬対課長が言った。
 「これは凄い。どうですか、これで今回の一連の事件は、ほぼ解明されたということですね。問題はこれらの小包がどうやって日本に送られることになっていたのですか?ルートと手段です」  つづく

 

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