« 2009年6月6日 | トップページ | 2009年6月10日 »

2009年6月7日

2009年6月 7日 (日)

(5)「閲覧制限」穴だらけ(7日)

「健全サイト」に出会い系も

 青いアイシャドーと濃いめの口紅。母親のベージュ色の上着を借りて“変装”した高2のユイ(16)(仮名)が向かった先は、東京都内の携帯ショップだった。昨年11月。親のふりをしてケータイのフィルタリング(閲覧制限)を外すのが目的だった。店員はユイをジロジロ眺めたが、何も聞かずに解除に応じた。 「ついでに妹の分も外しちゃった」

 この店の店員は「保険証などで確認するルールだが、写真付きじゃないので厳密な確認までは」と口を濁す。有害サイトに接続できないようにするフィルタリング。今月施行された有害サイト規制法では、子どものケータイには保護者が解除を申し出ない限りフィルタリングを設定するよう義務づけた。電気通信事業者協会によると、フィルタリング利用者数は昨年末から今年3月末までに78万人増え、573万人に達した。仮に全国の小中高生約1400万人全員がケータイを持っているとすれば約4割に普及した計算になる。だが、契約後どのくらい解除されるのか、携帯電話会社は明かしていない。 民間研究機関「MMD研究所」によると、自分名義のケータイを持つ18歳未満の子どもの63%が、親名義のケータイの子でも46%が、それぞれ「フィルタリングを解除した」と答えている。

◎ 「中学生。彼氏募集中です」「高校生ですが、相手してくれる人いませんか」――。出会い系サイトまがいの書き込みがあるとして、警視庁がミクシィやグリーなど携帯サイト運営会社6社に対し、サイト内のグループ「コミュニティ」の削除要請に踏み切ったのは今年2月だ。 要請を受け、ミクシィはコミュニティ約330件を削除した。それでも28日現在、「出会い」というキーワードで検索できるコミュニティは700件以上残る。 画面の端には、「妄想だけじゃガマンできない」「エッチな刺激が欲しいなら」といった文言の並ぶ広告も。クリックすると過激な性描写が売りの漫画配信サイトにジャンプする。同じく要請対象のモバゲータウンは会員に消費者金融の広告付きメールを送る。 要請対象の6サイトのうち、ミクシィやモバゲーなど4サイトは、フィルタリングをつけたケータイでも自由に見ることができる。モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)が「健全」とのお墨付きを与え、それを受けた携帯電話各社がフィルタリングから外しているからだ。

 携帯サイト運営会社などが資金を拠出して、EMAが設立されたのは昨年4月。増田総務相(当時)がフィルタリング原則導入を要請するなど、国によるサイト規制論が高まるさなかだった。EMAは、フィルタリング義務化がスタートする今月までに、ほとんどの大手サイトを含む25サイトを認定し、規制の網から逃した。 審査についてEMA事務局は「委員以外には公開していない」とするが、これまでサイト内容を理由に認定が取り消された例はない。ネットの安全に詳しい前田雅英・首都大学東京教授(刑事法)は「最初からフィルタリング外しが目的にも見えてしまう。このままではフィルタリングという仕組みそのものが骨抜きになる」と恐れる。

◎ 家出掲示板で「泊(と)め男(お)」を探し、11か月間も家出を続けていた16歳の少女は、グリーやモバゲーも家出掲示板として使っていた。多くの「健全サイト」でも、写真投稿やチケット売買が行われている。手にした瞬間、親や教師の介在できない世界を広げるケータイ。その歯止めになるものは今、あるのだろうか。(おわり)

(この連載は、吉原淳、山下昌一、田中健一郎、竹井陽平が担当しました)

(2009年4月29日  読売新聞)http://www.yomiuri.co.jp/national/oya2/oya090429.htmYomiuri_koudoku1_7

 

| コメント (0) | トラックバック (0)

« 2009年6月6日 | トップページ | 2009年6月10日 »