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2009年5月 8日 (金)

小説警視庁薬物特命捜査官(53)

      突然の報告会

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「早いんですね。ありがとう…。もう起きます。きょうこれから…。そうだ送致だっけ」
 鬼頭は、髪の毛を気にしながら留置室に走った。その仕草に白鳥は、吹き出した。
 歯磨きを済ましたころ、携帯が鳴った。妻の絵美からだった。
 「貴方、着替えをどうなさいますか?。お持ちしますか?」
 絵美のこの声が、今朝は何故か特に優しく聞こえた。
 「そうだな、今日は調べがないから…。帰れると思うから…いいや」
 鬼頭は、母親と絵美の年齢をだぶらせた。絵美は私より五つ年下だから今、五十四歳。母は五十二歳で亡くなっていた。「母と妻の年齢を比べてどうするのか?」と自分で思った。そうしたら鬼頭は「母ちゃん。どうすれば良いんだ」と、思いっきり絵美にすがって泣きたくなってきた。
 鬼頭が新橋の特命捜査官室に着いたのは午前九時を少し過ぎていた。署長報告を済ませてからの出発となったためだった。
 部屋に着いたのは丁度、警視庁ニュースが流れている途中だった。警視庁では毎朝九時に庁内ニュースを全館放送する。当然、管内の百一署にも一斉放送されるのだ。
 「警察庁の重森課長が君の話しを聞きたいと言っていた。午前中、二人で行くか?」
 理事官からの言葉だった。鬼頭は、コーヒーをすすりながら、理事官に聞いた。
 「よろしいのですが…理事官のご都合は?」
 「ご都合?どうしたの今日は。いやによそよそしいですね。もうよその人になってしまいましたかな?」
 礼によって理事官のジョークが飛んだ。
 「会議があるのではないでしたか?昨日は理事官がそう言っていたような気がしたので…」
 「会議と言っても、午後の都合の良い時に君との打ち合わせと二課とのすりあわせでもしようと思っただけだよ。それに…」
 理事官が口籠もった。
 「それに…は何ですかね?」
 「いや、地下口座の件。二課が調べている名義人の木川田鈴子だが…。名義人だけでなく穴守を調べたいと二課が言ってきた場合、十日で渡した方が良いのか、どっちか片方だけとは行かないような気がしたのでね…」
 鬼頭もどうするかと気になっていた部分だった。覚せい剤を完全に絵を描くまでには、まだまだ一日だけの感触では読み切れない部分もあった。
 「どうでしょう。一応、昨日は北朝鮮との仕事関係は素直に認めました。勿論、覚せい剤五百㌘を二百五十万円で後藤田に売ったこと。二百五十万円は木川田の口座に振り込ませたという事実は認めています。時間的に北朝鮮と覚せい剤の関係にまで行けなかったがある程度の時期が来たら、二課と同時に調べるという方法はいいのではないのかと…」
 風間が鬼頭に聞いた。
 「個々の話しだからだが…これからは組織の部分に入るとなると、金の流れと絡めて調べたほうが強いような気がするのだが…鬼頭君はどう思うかね」
 鬼頭も是非、そうしたいと思っていた。そうすれば私情を挟む余裕はないと思ったからだ。
 「勿論、中心は北朝鮮から流入する覚せい剤の国内密売組織の解明にある訳で…鬼頭君の調べが中心で良いのだから…。鬼頭君ね。重森課長とあらかじめ打ち合わせしておいてから、二課との話し合いに臨んだほうが良いと思うんだよ。それで…」
 鬼頭もこの風間理事官の意見に賛成だった。
 重森に電話で時間の打ち合わせをすると重森は午後一時からではどうかという。風間は捜査二課長の石本に電話、その内容を伝え「警察庁が終わり次第に打ち合わせを開始する」ことで一致した。
 警察庁の十八階の重森薬対課長の部屋には、刑事局の捜査一課理事官などが集まっていた。生安からは霧島企画課長、警備局からは小嶋外事課長も来ていた。会議でもないのに感心の高さが分かった。
 「ご苦労さんです。ちょっと聞かせて貰ってもよいでしょうか?」
 小嶋課長が風間理事官に聞いてきた。風間は、面食らったように驚いた。
 「そんな、もう解決ではありませんからね。私のほうは重森課長に報告と打ち合わせに来ただけですから…」
 重森が言った。
 「もう、どうしようもないのですよ。警視庁から鬼頭さんと風間さんが来られると言っただけで、こうなんですから…」
 

 

 鬼頭は笑顔で答えた。重森から大阪府警と宮城県警、新潟県警の報告が読み上げられた。
 「大阪府警ですが、後藤田に関しては警視庁と合同で熱海の大オペレーションを展開して、後藤田の事務所にガサ入れをした結果、穴守から受け取った覚せい剤入りのポーチをそのまま押収することに成功しました。組対法違反容疑で別所警部が調べていますが、事実関係については後藤田は認めているようです」
 重森は続けた。
 「次に宮城県警ですが、覚せい剤とは別に警視庁との合同捜査となっている新城商会関係の捜査です。穴守と木川田の身柄以外の調べでは、北上の関係者はベラベラとまでいかないまでもある程度の供述が得られており順調のようです。但し、覚せい剤の部分になると『知らない』の一点張りで、その部分は極々、一部の少数の関係者しか知らないのではないかと思われます」
 さらに続けた。
 「新潟県警ですが、羹相進は外事と捜査一課、生安との調べを進めていますが、最初の捜索で押収できなかった覚せい剤が軽井沢から約二百㌘、それに土砂崩れで潰れた佐渡島の小屋を発掘した結果、北か中国から送られたと見られる包装紙が何枚か発見されました。さらに帳簿関係では、東京四葉銀行横浜支店の木川田鈴子名義の口座に、何回かの振り込みを確認していると言うことです」
 風間が喋りだした。
 「穴守は鬼頭警部が調べて、昨日は、後藤田への覚せい剤の譲渡は認めました。きょうは地検送致なので、乞うご期待というところです。それで捜査二課の地下口座ですが、きょう午後からこちらの報告、今後の連携と併せて打ち合わせることになっています。これまでのまとめでは刑事局には報告が済んでいると思いますが、金の流れはほぼ解明。問題は中国の口座関係で警察庁の返事待ちとか言っていましたが…」
 風間は小嶋外事課長の顔を見ながら説明したため、小嶋が答えを出さざるを得なかった。
 「なんだか捜査会議になってしまいましたね。北朝鮮にいる北上の件は現在、警察庁と中国公安部との間で中国人犯罪組織の関係で国家公安委員長も訪中するなど関係を深めていることもあり、ICPOの手配も含めて手配は万全です。それに…例の海南物産の梁伯一の件については、まだ回答がありませんが、きょう催促してみます」
 風間が、重森の顔を見ながら言い出した。つづく

 

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