連載小説 警視庁薬物特命捜査官(45)
石本は続けた。
「したがいまして、梁については中国公安当局に解明依頼を出し、当方は明日二日、一斉逮捕・捜索に乗り出したいと考えております」
話しの途中で、事件のチャートが書かれた用紙と逮捕予定者名簿、家宅捜索箇所が網羅されたA4の八ページ綴りの用紙が配られた。
「なおこれにつきましては、永堀生安部長と風間理事官の同意を得ておりますので、合同捜査本部とさせて頂きます。続いて大阪府警が実施した通信傍受で穴守の逮捕状請求までこぎ着けた生安の捜査結果について風間理事官から報告をお願いします」
風間は、今回大阪府警が実施した通信傍受結果を報告。今回の一連の北工作船が残した携帯番号の捜査が頂上までたどり着いたことを付け加えた。
風間はさらに続けた。
「我々の方は、実は明日七月二日に穴守と府警の狙っている後藤田が熱海で接触することを掴んでおりますが、これが実は今回の事件を左右するのではないかとみとおりますので一斉打ち込みは、基本的にはその推移を見てからになりますが…」
石本捜査二課長が頷きながら言った。
「『基本的に推移を見てから』というのは、どう言う意味ですか?」
「それは、熱海に張り込んでいる目の前で、堂々とブツの受け渡しが行われた場合、現行犯逮捕しなければならない状況があるかも知れないということです」
石本が言った。
「それがなかった場合は、翌日の三日以降にでもということですね。我々のほうも中国公安部からの最終報告を待ってからと思っていたのです。警察庁を通して供述調書の共同作成等を依頼したのですが、中国は現在、薬物取り締まりを最重点に進めており、こちらから依頼する必要もなかった分けです。一日や二日ぐらいの時間をおくことはかまいませんが、一斉打ち込みは我々も同時のほうが…」
石本の話が途切れたところで、風間が鬼頭の顔を見ながら立ち上がった。
「煎じ詰めれば、根っこが同じ事件。国税に待って貰った分けですから…出来れば同時にしていただければ…関係者の中には穴守は入っているわけですよね」
今度は石本が質問した。
「穴守は逮捕令状は持っていませんよ。あなた方が熱海で柄をとった場合…こっちは目的が違っても向こうはそんなこと関係ないし…全部、証拠隠滅された後で俺たちが入るのはちょっと」
この件に関しては鬼頭が立ち上がった。
「大阪の丸暴(後藤田)は、とにかくブツがなくて困っているようなんですね。で、土産に穴守が持ってくるのではないかとみているのですよ」
石本が全員の顔を見回しながら
「それはあなた方にとっては凄いことでしょう。ブツの取引場所になるかも知れないということですか?。痺れますよね…それでうちが打ち込んだら逆に穴守が熱海に行かなくなりますよねぇ」
そして続けた。
「分かりました。そこにも書いてありますが、我々は仙台のガサが中心なんです。新城商事とその支店関係を合わせ、勿論、社長の自宅を含めると十カ所近くになります。現行犯逮捕した場合に備えて明日、配置をします。しなかった場合でも何時でも着手出来るようにしましょう。ところでその際は、違う容疑で生安も一緒に入ることになるんですよね?」
風間が答えた。
「容疑が違っても…国税と違って、同じ屋根の下なんだから…それに我々は、あくまでもブツとその関係書類だけなので…そのための合同捜査なんだから…阿吽の呼吸でやりましょうや」
石本は「言った意味が違う」と腹立たしさを感じて立ち上がった。
「阿吽の呼吸ぐらい分かっているよ。俺が言ったのはやる場所だよ。生安はリストぐらい出せないのか?」
そしてさらに石本が聞いた。
「わが方は良いよ。じゃ宮城県警は了解済みなんでしょうな?」
風間が答えた。
「捜索リストの件は失礼しました。鬼頭君後で出せますね?」
風間は鬼頭に確認をとったうえで続けた。
「その話しは、永堀部長からも笹川部長からも言われておりまして、打ち込みは全部合同という名目になっております。ですが…宮城県警は入る場所と入らない場所があるとも聞いております。なんか、北朝鮮に行っている北上の件で警備部が入りたいとしているところが中心のようなので…」
こうして、この日の打合会は終わった。さぁ、明日は熱海での大捕物が待っている。つづく
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