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2009年2月 8日 (日)

☆【疑惑の濁流】浮かび上がる拉致の「点と線」(8日)

Banner_logo_051_4 「大町ルート」。北朝鮮による拉致被害者を調べている「特定失踪者問題調査会」(荒木和博代表)が目を付ける不思議な道筋がある。千葉から、東京や埼玉、長野を経て日本海へと抜ける、かつて在日朝鮮人らが多く使っていた物ルートのことだ。「失踪者が消息を絶った現場を地図上に落とすと、奇妙にも多くがルート上に重なる」(調査会)。終点は北朝鮮工作員の上陸ポイントが多数設定されていた日本海沿岸。この“点と線”は何を物語っているのか…。■太平洋側から失踪の謎…失踪者の3割がルート上
 昭和37年4月、千葉県海上町(現旭市)の自宅から美容院に出かけたまま行方不明となった家事手伝い、加瀬テル子さん=失跡当時(17)=は、調査会が「拉致濃厚」とする失踪者だ。翌日には新宿コマ劇場へ観劇へ行く約束を叔母としていたといい、失踪時の所持金はパーマ代のみだった。加瀬さんのほかにも、周辺では6件の失踪事案(未届も含む)があったことが調査会の調べで判明している。だが、仮にこれらの失跡事案が拉致事件だとしても、海上交通量が多い太平洋側に、工作船が近づくことは事件発覚のリスクを伴う。そこで、調査会が立てた仮説が「太平洋側で拉致し、日本海側まで陸路で運ばれたとすれば、どのようなルートか」だった。ヒントは、現地での聞き込み調査でみつかった。「ここは水あめの産地で、在日朝鮮人の人々が多く従事していたんですよ」 現地調査の際、地元住民はこう説明したという。水あめは焼酎の味付けのため、日本海側から北朝鮮へ輸出されていた。そして、それらを日本海側まで運んだルートが「大町ルート」だった。千葉を起点に東京や埼玉、山梨、ルート名ともなった長野・大町を経て、糸魚川付近で新潟、富山に分かれる。新潟港は北朝鮮の貨客船、万景峰号が入港していたことで知られ、富山の氷見港にも、北朝鮮との間を往復する貨物船が頻繁に出入りしていた。調査会の真鍋貞樹副代表は「(『大町ルート』を使って)新潟、富山の在日朝鮮人が食肉や海産物などを車で運んでいた。ルート周辺には在日の人々が多く居住する地域もあり、大切なルートだっだ」と解説する。北陸から新潟にかけての日本海側には、工作員の上陸ポイントが多数設定されていた。「そこには工作員をかくまったりする『土台人』と呼ばれる協力者がいたはずだ」。拉致問題に取り組む関係者はそう指摘する。在日朝鮮人らの中で工作員に目をつけられた人々が、北朝鮮にいる親族の安全と引き換えに工作活動への協力を強要されたことは、これまでの拉致事件の捜査や韓国での公判の内容で明らかになっている。調査会によると、失踪者が行方不明となった現場が大町ルート上に重なるケースは、約150件にも上るという。これは、調査会に情報が寄せられている失踪者約470人の約3割に達し、「偶然の一致」とするには確かに多すぎる。現場は関東に集中しているが、ルート途中の地方にも、失踪ポイントは多く点在する。
 「このルートで拉致被害者が運ばれた可能性は捨てきれない」真鍋副代表はそう語る。
 調査会には、その“実証例”ともいえる証言が寄せられたこともあった。
■「青年を新潟に運ぶのを手伝った」…ルートと符合する証言
 平成16年10月末、調査会に一本の電話が入った。「(千葉県内にある)病院の関連施設から新潟に運ぶのを手伝わされた。調査会が発表したあの青年だ。藤田さんだよ」
男は当時60歳ぐらい。北朝鮮と関係が深いとされる都内の病院関係者の運転手をしていたと自称したという。調査会は電話に先立つ同年8月、昭和51年2月に埼玉県川口市の自宅からガードマンのアルバイトに行くと出かけたまま失跡した東京学芸大生、藤田進さん=同(19)=について、「拉致濃厚」と発表していた。調査会は男と接触を重ねた。 「山梨を通って日本海側で富山方面に分かれる所から新潟へ行き、万景峰号に乗せた」「(藤田さんは)泣いていた」…。男はそう証言した。警視庁にも「藤田さんの拉致にかかわった」という趣旨の供述をしたという。その“拉致”ルートは、まさに「大町ルート」そのものだった。「だが…」と、真鍋副代表はトーンを落としながら言葉を続ける。「残念ながら、男の話の信憑(しんぴょう)性を裏付けるものは何もない。『大町ルート』はあくまでも仮説にとどまっている」古い話であり、警察の捜査でも、男の証言内容を今確認するのは不可能に近いためだ。

■田口八重子さんは? 浮かび上がる“状況証拠”
 政府認定の拉致被害者の中にも、どこから連れ出されたか分かっていない被害者がいる。田口八重子さん=拉致当時(22)=だ。昭和53年6月、勤務先の東京・池袋の飲食店で知り合った「宮本明」を名乗る在日朝鮮人の補助工作員に「温泉に行こう」と誘い出されたとされている。「近く新潟へ旅行に行く」 田口さんは拉致される少し前、飲食店の同僚に、こう話していたことが分かっている。新潟・佐渡島は、調理師をしていた田口さんの母の故郷でもあり、捜査当局が「田口さんは新潟で拉致された」との見方を強めた時期もあった。調査会に電話をしてきた男が関係していたという都内の病院。ここには、「宮本明」ががんで一時入院していたとされ、疑惑の「点と線」は、おぼろげながら拉致事件との関連性を浮かび上がらせている。だが、北朝鮮側は平成16年の日朝実務者協議で、「工作員が『(宮崎市の)青島海岸まで行こう』と田口さんを誘引した上で、青島海岸から田口さんを連れてきて、海州(ヘジュ)から入境した」と説明。田口さんの兄、飯塚繁雄さん(70)も、帰国した被害者、地村富貴恵さん(53)から「田口さんは青島から船に乗せられ、南浦(ナンポ)に連れてこられたと聞いた」と聞いている。入北場所は異なるものの、「青島海岸」というポイントは共通する。青島海岸は拉致被害者、原敕晁(ただあき)さん=同(43)=が、大阪から就職面接の名目で誘い出され、拉致された現場でもあり、工作員が出入国を繰り返すポイントだった。新潟か、宮崎か-。田口さんが連れ出された詳細は定かになっていない。「拉致現場近くに直接工作船が来れば発覚しやすい。現場から離れた場所に対象者を連れて行き、工作船に乗せるのが北朝鮮にとっては安全な方法だ」真鍋副代表は、複数の「拉致ルート」が存在した可能性を指摘した上で、「その中のひとつが『大町ルート』であり、対象者や拉致現場、実行犯の指示系統などによって、使い分けられていたのかもしれない」と話す。大町ルートの闇の解明が拉致事件を前進させるきっかけになる。http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/220127

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