« ☆教育機関かたり架空請求「10年前の資格講座の解約料を」(27日) | トップページ | ☆買春容疑で陸自隊員逮捕 長崎県警(27日) »

2009年2月27日 (金)

連載小説 警視庁薬物特命捜査官(43)

     捜索漏れがあったのか

080713_164028_m 通信傍受が全て終了したあと、鬼頭が言った。
 「来月の2日でしたっけ。熱海行きは…」
 「そう。Nシステムで確認をとらないとね。せっかくの証拠を裏付けるためにも…」
 課長が鬼頭に確認するように言った。
 「その場の受け渡しはないと思いますが…」
 「それにしても…」と鬼頭。そして続けた。
 「通話の中では、新潟に覚せい剤があるはずだと言っていましたよね…」
 別所も課長も「そう」と認め
 「どうしたんですか?押収していないのですか?」
 と鬼頭に聞き返した。
 鬼頭は、新潟県警の捜索で潰れていた小屋が気になってしかたがなかった。
 課長は当然と思っていた。こうして鬼頭は大阪での3日間の出張を終え警視庁新橋分室に帰ってきた。待ち受けていたのは風間の報告だった。
 「鬼頭さん、いかがでしたか?大阪御堂筋の夜は…雨の御堂筋♪…なんてね。最高でしたでしょう。で…カラオケには行ったの?」
 「行きましたよ。声が枯れちゃってね…ほら…ばぁーっ…」
 話しは現実に戻され鬼頭の顔が真面目になった。
 「通信の傍受は成功しました。穴守の話しでは、どうも新潟に覚せい剤があるらしいのですが…その前にスポット傍受で切られました」
 風間の顔が一瞬、曇った。おい、新潟県警で覚せい剤なんて押収していないぞ…
 風間の表情を気にしながら、さらに鬼頭は続けた。
 「後藤田と穴守の会話の中で仙台の水死体の金山剛の話が出ました。捜査の手が伸びたことから穴守が後藤田に相談していること。それから、多分ですが薬が手に入らないので値上がりしていることなどもです。金山の件に関しては北上の名前を気にしていましたのですが…これを解明できれば薬物関係には相当、期待できるのですが…」
 鬼頭の話しを聞きたくて佐藤、榊原、伊藤光太郎、それに小宮山まで集まってきた。鬼頭にとって全員が揃ったようで懐かしささえ感じた。風間が理事官席横のソファーに全員を座らせた。佐藤が座りながら話し出した。
 「立派な証拠として使えますよね今回の傍受は…。あの水死体は薬が絡んでいることになっていたでしょう?十分ですよね理事官」
 「十分、十分ですよ。よくやった。それでな…」
 新潟県警のガサで発見されなかった覚せい剤の話しが鬼頭の心の中に残っていた。話すタイミングがなかった。
 風間理事官の顔が真剣な表情に変わった。
 「向こうの政治関係団体から警視総監宛に抗議文が届いたんだよ。勿論、上は気にすることはないと言っているが…。内容は北朝鮮の工作船の捜査は終わっているのに、何で警察が動いているのかというんだ。おかしいと思わないか?」
 「向こう」とは北朝鮮サイドのことだ。風間の言葉に鬼頭が続けた。
 「なんで警察がその関係の捜査をしていると知ったのですかね」
 榊原が口を開いた。
 「と、言うことは、相手も相当、情報収集をしているということだ。それはそれで良いでしょう。しかし、新潟で発見されなかったということは別の組織があるのか?いずれにせよ、もう隠滅されたかも知れませんね」
 

その会話を打ち切るかのように女性職員が風間に受話器を渡してきた。
 「理事官=電話が入っています」
 電話は警察庁の重森からだった。
 「重森です。鬼頭さん帰った?。通信傍受は成功したんだってね。新潟も喋り出したというではないですか。府警から連絡があって篠原組の覚せい剤密売容疑での着手は、令状が取れるネタが揃うなど順調に進んでいるそうですね」
 重森の声が弾んでいた。風間が聞き返した。
 「組本体に対するガサ令状ですか?」
 「そう言っていた。篠原の経営する店が取引の場になっていると言うんだ。五カ所ぐらいあるらしい。あそこはベーヤンがいるからな…」
 電話の途中で、風間は鬼頭にそのことを報告した。鬼頭は親指を立てた。
 さらに重森はハイテンションになって言った。
 「それが終わってからですね、仙台の殺し関係、聞いたよね穴守との会話を。その関係で打ち合わせをしようかと思っているのですが…」
 重森はさらに続けた。
 「どうもね、見ているとボスというかテッペンは穴守になるのではないかと、ふと思ったのですが…思い過ごしかね、風間さん」
 風間が続けた。
 「私もそう思うんですよ。捜査二課がやっているキカワダの口座ですが、あのキカワダという女はどうも、穴守の女房だそうなんですよ」
 「打ち合わせまでに捜査二課は間に合うかなぁ」
 重森も風間も事件が大詰めにきていると感じていた。
 「捜査2課はまもなくだと今朝の途中報告で言ってましたよ」
 と風間が報告した。その風間に、鬼頭が新潟県警の件を打ち明けた。風間の顔がひきつった。そして出た言葉は「捜索漏れかね…」
 風間の言葉が終わらないうちに、鬼頭が交換台に、新潟県警の阿部生安部長のデスク席の電話番号を告げた。
 「はい、阿部です。あ、鬼頭さん。どうも先日は…」
 明るい声だった。鬼頭は大阪府警の通信傍受で出た後藤田と穴守の会話内容をストレートに伝えることが出来ずに悩んだ。そして
 「阿部課長、心配なのですが…今回の捜索で、覚せい剤の見逃しはなかったでしょうね?」
 「いゃ、実はそれでね。鬼頭さんが大阪府警に行かれていたので報告が遅くなりましたが、鬼頭さんから指示があった羹の乗用車のカーナビの行跡を巻き戻したのですよ。そうしたら、軽井沢の別荘地に、真っ黒くなるぐらいの行跡があったので、現在、その現場に一個班を出している最中なんです」
 この報告を聞いた鬼頭は、いくらか安心したが、土砂で埋まったとして捜索を放置したところが気になったので問いただした。
「軽井沢は令状を持っているのですか?。それに、気になっているのですが…この前の令状があるやつで佐渡島の土砂で潰れた小屋ね。あれ、掘れないかね…」
 阿部はびっくりした声で応答した。
 「軽井沢は令状を持って行きました。土砂に埋まった小屋ですか?。偶然の一致ですが、今朝、平井さんから提案がありました…」
 「それで?」と鬼頭が聞き返した。
 「そうですね。令状の時間はまだ残っているので掘ってみましょう」
 阿部は、あっさり引き受けてくれた。つづく

« ☆教育機関かたり架空請求「10年前の資格講座の解約料を」(27日) | トップページ | ☆買春容疑で陸自隊員逮捕 長崎県警(27日) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 連載小説 警視庁薬物特命捜査官(43):

« ☆教育機関かたり架空請求「10年前の資格講座の解約料を」(27日) | トップページ | ☆買春容疑で陸自隊員逮捕 長崎県警(27日) »