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2008年10月10日 (金)

★小説 警視庁薬物特命捜査官(23)

    ロックの雅の正体は
080713_164028_m  ファックスの配信を受けて最も驚いたのは、当時中国人マフィアと関東連合摘発の糸口となる高校生に対する覚せい剤密売事件を検挙した福島県警生活安全部。同事件は警察庁長官賞を受賞したものの、逮捕手続き上で問題になった事件だった。
 同県警は、捜査手続きの過ちの戒めを含めて、全体的には前向きの捜査であったとして、福島県警察学校の教材として利用するなど、後輩への伝承材料となっている。
 一方、警視庁は日本国内に存在している中国人マフィアが「福建省グループ」などとして組織化、日本の暴力団との連携を強めている実態を解明しているだけに刑事部捜査四課は同記事に注目した。しかし、週刊誌の仮名「北島」ではなく実名の「北上雅也」を記憶している刑事は少なかった。
 週刊誌が発売になって五日後だった。警視庁江戸川署の捜査本部を六十歳は過ぎている女性が訪れた。手には例の写真週刊誌が握られていた。
 「すみません。金田さんが殺された事件の担当者にお会いしたいのですが…」
 警察署の受付カウンターにいた再雇用の担当者がびっくりした。
 「捜査本部と言ってもこの時間は留守番しかいないのですが…緊急ですか?」
 日中は捜査員が出払っていることを説明した。刑事上がりの再雇用職員ではなかったので、いささか拍子抜けの答えだった。近くにいた警務課員が立ち上がった。女性は、その課員に向かって言った。
 「あのう、この前、刑事さんから聞かれたことで思い出したことがあるのですが…」
 「垂れ込みだ」と直感した課員は、まず刑事課長卓上に電話を架けた。刑事課長が出たので説明した。
 「上げて下さい。私が扱いましょう」
 女性が刑事課長に説明を始めた。
 「実は先日、事件のときに名前は聞かなかったので担当した人が分かりません。その時は知らなかったのですが…、きょう、この写真を見て思い出したことがあって…」。女性は週刊誌の写真を示しながら話した。
 「どういうことでしょうか?」と刑事課長。
 「私は台東区日本堤で五十年近く旅館を経営している者で、木島さと子と申します。だいぶ前に隅田川で殺された方について、泊まったかどうか刑事さんに写真を見せられた時には、どこかで見た記憶があったが思い出せず『知りません』と言ってしまいました」
 「それで…」
 刑事課長はメモをとるでもなく聞いていた。
 「そうしたら、うちの主人が刑事さんに『誰かを訪ね歩いていた男の人だ』と言ったことから、なんか、殺された方は青森県の人だとか分かったそうですね。その人はうちには泊まっていませんでしたが…きょう来たのはその続きなんです。よろしいでしょうか?」
 「ちょっと待って下さい。それでしたら別の部屋に行きましょう」
 刑事課長は捜査本部のデスク席にダイヤルした。林管理官が電話に出た。
 「刑事課長ですが、情報を持ってきた方がいますので案内します」
 木島さんは足が悪いので、エレベータに乗せられた。
 捜査本部は刑事課のすぐ上の五階の会議室に置かれていた。林管理官の席に案内された木島さん。さらにビックリしたのは、事件の関係が書かれた白板に貼られた被害者の金田正夫さんの隣に貼られた金田悟さんの若い時の写真を見た時だった。
 「あっ、この人だ」
 木島さんは、白板に張られた写真を指さして叫んだ。
 「あぁ来て良かった。この写真の人なんです。私が記憶している人は…。そいで、今回はここに写っている写真の男の人と昭和五十年ごろだったと思うのですが、私たちの旅館に一緒に泊まっていたことがありました」
 

 「えっ、この写真の人と雑誌の写真の人とが同じ部屋に泊まった」

 まず林管理官が驚いた。
 「そうなんです。主人と話していて、この雑誌を見て思いだしました」
 こうして寄せられた木島の情報に、捜査本部と新潟県警は大混乱に陥った。
 既に、隅田川から死体で発見された金田正夫さんは、約三十年前に行方不明になった兄の悟さんを捜しに青森から上京して何者かに殺害された。
 死因は、覚せい剤を一度にしかも大量に注射されたことによる薬物のショック死であること。そして悟さんは、山谷で放浪生活を送っていた昭和五十年ごろ「ロックの雅」という男とともに行方不明になった。
 その「ロックの雅」と思われていた人物が、今回北朝鮮に行っていることが判明したのだ。この結果、悟さんは羹の兄の「ロックの雅」に成りすまされた「はい乗り事件」と見られていたことは、覆(くつがえ)ることになる。ロックの雅が実在した。しかも日本人だった。
 「なんのこっちゃい。なんだかさっぱり分からん」
 報告を受けた捜査一課長と署長の頭が混乱した。林管理官が一課長と署長の顔を交互に見ながら説明した。
 「そんなに深く考えることはありません。木島さんが見ている写真は本物の悟なんです。そしてもう一人は北上雅也なんです。ですからこれまで悟さんを、はい乗ったのは得体の知れないロックの雅と見られていた。ところが今回、ロックの雅の正体が北上雅也であることが明らかになった。それだけの話しです」
 「そうしたら新潟県警の羹の兄は、はい乗り犯ではない?」
 「はい乗り犯人には間違いないのですが、悟さん不明の件、つまり殺されているとしたらその実行犯は二人なのか一人なのかが問題なのです。とりあえず、羹の兄とロツクの雅こと北上雅也は別人であることを証明しておく必要が出たわけです」
 「じゃぁもうひとつ。北上は仙台の暴走族で関東連合の幹部だろう。東京に足があったことで、つじつまが合わないのではないか?」
 署長のこの言葉に捜査一課長が答えた。
 「警視庁が当時、中国のマフィアで福建省グループと日本の暴力団の繋がりを立件しているでしょう。これで北上は仙台だけでなく篠原組の関連がある関東連合と分かった。東京とも繋がりができた訳です。さらに北朝鮮に繋がるとしたら、場合によっては金田正夫さん殺しにも繋がるかもしれない」
 こうして江戸川署の捜査本部は、羹の兄との「面通し」のため木島さんを新潟市に案内することになった。つづく

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