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2008年8月 8日 (金)

★小説 警視庁薬物特命捜査官(14)

    浮かびあがった中国人犯罪集団

080713_164028_m 鬼頭は、既にタクシー運転手の案内で殺人死体が流れ着いた現場を見ていたこともあり、高橋の説明を飲み込むのが早かった。聞きながら頭の中で絵を描いていた。
 広瀬川は逆光線にキラキラと輝き、鬼頭は歌手・さとう宗幸の「青葉城恋唄」を口ずさんだ。
  ♪ 広瀬川流れる岸辺 想い出は帰らず 早瀬躍る光に 揺れていた君の瞳はめぐり  また夏が来て あの日とおなじ流れの岸 瀬音ゆかしき杜の都 あの人はもういない ♪♪
  ♪ 七夕の飾りは揺れて 想い出は帰らず 夜空輝く星に願いをこめた君の囁きは めぐり また夏が来て あの日とおなじ七夕祭り 葉ずれさやけき杜(もり)の都 あの人はもういない ♪♪http://jp.youtube.com/watch?v=oyTnjhB5jBQ
 あまりにも美しい光景に高橋もつられて歌い出した。

   … … … … … …
 鬼頭らは、翌日の早朝から角田市に向かうはずだった。ホテルの食堂で朝食をとろうとしていた鬼頭の携帯が鳴った。風間からだった。
 「今朝の東京日々新聞を見たかね」
 「今、見ながらコーヒーを飲もうとしていますが、なんですか?」
 「北朝鮮に日本の丸暴が行ったという話しだよ。一面に出ているだろう、一面…」
 「一面は米国の国防総省の話しですよ。理事官は違う新聞を読んでいるのではないでしょうね。あるいはまだ寝ぼけていたりして…」
 「そうか、お前は田舎の新聞を読んでいるんだ。新聞でなくて旧聞をな。だから出ていないんだ。ファックスするからさ。見といて~な田舎者さんよ>」と言って電話が切れた。
 風間がこんな言葉を使うときは、調子の良い時である。
 新聞のファックスが届いた。
  「平壌市内で日本の暴力団が暗躍」
    覚せい剤の買い付けか 今月はじめ北京経由で入国
     韓国紙が報道
 横見出しは黒ベタ凸版だった。鬼頭は自室に帰り本文を読んだ。
  【ソウル=太田まきこ】韓国の東洋新聞の二十四日の報道によると、日本の「キタカミ マサヤ」と名乗る男が北朝鮮の公安当局に身柄を拘束されていることが明らかになった。同  報道については、数日前に北朝鮮の平壌日報でも報じられている。
   男は、今月上旬に日本の成田国際空港から出国。北京経由で平壌入りしたもので…
 鬼頭は風間に電話を架けなおした。
 「理事官、これ本当ですか?。ヨタ記事でないなら警視庁には入っていたのですか?」
 警察業界では新聞記事を指して「ヨタ記事」という文言を良く使う。当局が発表していないうえ内容が、全くでたらめな記事を、そう呼んでいるのだ。
 「入っていた。外務省から昨日の夜に連絡があった。外事課にだ。だから報道は同時に掴んだのだろうな。ほら、特に東京日々新聞は北朝鮮に強いからな…」
 「どこの人間なんですか?」
 「それが仙台市なんだ。北上雅也と言って住所は仙台市泉区南光台×丁目××なんだけど、逮捕歴があってな、中国人裏社会の陰の仕掛け人と呼ばれている一人らしい」
 「聞いたことありますね。確か、五、六年前だったと記憶していますが、中国残留孤児で覚せい剤取締法(所持)容疑でしたよね」
 「そう。福島県警と郡山中央署が追っていた事件だった。日弁連が違法捜査と騒いだ家庭内暴力保護少年と覚せい剤を結びつけた事件だよ」
 「たしか、その少年の供述に基づき密売グループが浮かび、さぁ逮捕令状請求だというときに降りなかった。裁判官が思想的におかしくてな」
 「そうでした。あれは凄い捜査でした」

 風間が事件のあら筋を話し始めた。

 ~蒸し暑い夏のある夜「家庭で息子が暴れ、父親が頭に怪我をしているので助けてほしい」という一一〇番が入った。郡山中央署の当直だった少年係の部長刑事が駆けつけると、十九歳になる次男が、包丁を手にわめきながら玄関をうろうろしていた。
 包丁を手にしているものの、制服警察官が駆けつけると静かになり包丁をすんなり渡して身柄が確保された。
 福島市内の予備校に通っているが、二年前あたりから家庭内暴力が頻繁になっていた。同夜は父親が酒に酔って帰宅したのにハラを立て、顔を殴られた父親は玄関で倒れて頭を打った。父親を病院に収容しなければならないという母親の要望もあり、この夜は次男を郡山中央署が保護することになった。
 郡山中央の部長刑事がパトカーに乗せようとした時、母親が駆け寄ってきた。
「刑事さん。ちょっと来ていただけますか」
 部長刑事は次男を同僚に渡して自分は今後のこともあり残ることにした。母親に招かれるまま自宅の台所に入った。母親は冷蔵庫を開けて新聞紙に包まれた物を渡した。部長刑事はその新聞紙を開けてみた。
 透明のビニールのパケに白い粉が見えた。「覚せい剤だ」と部長刑事は直感した。
 「前々から気になっていたのですが、ついつい言えなくて…ごめんなさい。やっぱり薬なんですよね」
 母親の声は震えていた。部長刑事は出発しようとしている捜査車両を止めようとしたが既に出た後だった。部長刑事は本署に電話。保安係の主任を現場に呼んだ。現場で覚せい剤の確認をする必要があるからだ。薬剤を使った判定が出るまでは時間がかからなかった。覚せい剤は本物で、少年から採取された尿も陽性の反応があった。同署は翌早朝、郡山裁判所に「覚せい剤所持及び使用」容疑の逮捕状を請求した~
 話しの途中で鬼頭が言った。

 「そうそう。あら筋はそうだった。ところが、少年が大変なことを唱(うた)ったから大事件になっていった」
 風間は思い出すようにまた、喋りだした。
 ~少年が「覚せい剤を購入したのは通学の電車の中で、郡山から通学する学生の間では話題になっていた」と自供したことから始まった。
 このため福島県警は通学電車内の大捕物を実施、高校生八人と密売人二人を逮捕した。この密売人が仙台市の中国人犯罪人グループに繋がった。大変な事件で福島県警は後に警察庁長官賞を貰った。「最初に保護、覚せい剤所持容疑で逮捕した少年の件で弁護士が意義を申し立てた」~風間の話が途切れた。
 今度は、鬼頭が話しを引き受けて続けた。
 「郡山中央署は、最初に家庭内暴力の通報で民家に向かった。そして保護した。ところが母親が覚せい剤を提出したことから覚せい剤所持及び使用でそのまま逮捕・拘留した。その後、運が良く大変な供述を得た訳だが、弁護士は『最初から覚せい剤目的で逮捕するための保護だった』とクレームを付けた」
 今度は風間が引き継いだ。
 「そう。逮捕するには一度保護を解除しなければならないという、単純な手続きを踏んでいなかった。保護には厳格な手続きが要求され、解除の際は少年を一旦、署の外に出さなければならない」
 法的な手続きは鬼頭が巡査時代に徹底的にたたき込まれ「体で覚えろ」と言われた部分だ。しかし、人員不足は時として原則を忘れさせる。
 「夜中の出来事であり、郡山中央署はこの簡単な手続きを忘れてしまった。そのため違法捜査だと大変な騒ぎになった」
 風間がつぶやくようにこう言った。
 「署長以下大量の処分者が出る騒ぎまで発展してしまったんだよな…」
 そして
 「それが中国人犯罪集団・Xグループの存在が初めて確認された事件となり警察庁はその犯罪集団の全容解明を全国の警察に指示した。こうなる訳だ」 つづく

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