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2008年8月22日 (金)

★産経特別企画 【医療と刑事捜査】免責は特権か 萎縮の歯止めか 上・中 (22日) 長い原稿なので暇な時にお読み下さい

産経ニュースMsn_s1_4

「医療側からみて理解不能な刑事訴追の典型が大野病院事件だ。検察官は能力はあるが、使う方向が間違っている」 業務上過失致死罪に問われた福島県立大野病院の産科医、加藤克彦被告(40)に対する判決を控えた7月28日。日本医学会が東京都内で開いた「診療関連死」に関するシンポジウムで、日本救急医学会の堤晴彦理事が捜査や公判への不信をまくし立てると、会場から大きな拍手が起こった。実際、そう考えている医師は多い。加藤医師の逮捕以来、捜査に抗議する声明などを出した医療系団体は約100を数える。日本産科婦人科学会の岡井崇理事は「今回のケースは癒着胎盤という珍しい症例で、最善の手術方法がまだ確立していない。これで刑事罰が問われるのであれば今後、難しい外科手術はできなくなる」と指摘。「過去に立件されたカルテ改竄(かいざん)や医療過誤とは質が異なる」と主張する。一方で検察側が捜査に万全の自信を持っていたことはいうまでもない。裁判では「手術の際の注意事項は基礎的文献に書かれている。産婦人科医師としての基本的注意義務に著しく違反する過失を起こした」と弁護側の主張に反論した。「過去に起きたカルテ改竄事件に象徴されるように、医療現場には仲間でかばい合ってミスを隠そうとする体質があったことを忘れてもらっては困る」「私たちは患者目線で捜査しているんだ」…。公然と捜査を批判する医療界に対して、敵意をむき出しにする検察官も少なくない。 司法試験を通った検察官。遺族感情や社会常識を考え、法に照らして罪をあぶり出すのが仕事だ。対して医師試験という難関を突破し、臨床経験を積んだ医師は、自分たちこそが医療の現場を熟知しているという自負がある。「文科系と理科系のエリートたちの互いへの不信感が全面対決したという構図だな」。今回の事件を俯瞰(ふかん)して、ある裁判所の幹部が漏らした。   

■   ■ 加藤医師の逮捕から1審判決までの2年半。期を同じくして医療現場、とりわけ産科の現場は急速に荒廃が進み、産む場所がない「お産難民」や出産救急の「受け入れ拒否」が社会問題化した。厚生労働省の調査では今年1月時点で、お産の休止や取扱件数を制限している病院は全国で77施設もあった。その一因として、医療現場は「大野病院事件での捜査」を挙げる。日本医師会の木下勝之常任理事は「『あれで逮捕されたらかなわない』と、現場の医師の気持ちが萎(な)え始めた」と指摘。北里大学医学部の海野信也教授(産婦人科学)は「刑事立件の可能性が医学生にも認識された。たとえ本人が志望しても親や家族が反対する」と証言する。医療事故の原因究明は、刑事裁判にはなじまないのではないか。医療現場の声をくみ取る形で、厚生労働省は19年4月、法務省と警察庁も巻き込み、捜査機関に優先して死因の調査、評価、分析などを究明する機関である「医療事故調」(医療安全調査委員会)設置の検討会を立ち上げた。ただ、事故調が構想通りの機能を果たすことができるかどうかは未知数だ。「医療関連死」に関するシンポジウムでは、捜査への不信や事故調設置の必要性では一致する医療関係者らも、その内容や時期をめぐっては「一刻も早く」「もっと議論を煮詰めてから」と意見がバラバラだった。 医療界と捜査機関の対立が溶ける兆しはみえない。    
◇ 捜査機関と医療界が激しく対峙してきた裁判で20日、福島地裁は被告に無罪を言い渡し、医療界側に軍配を上げた。近年、捜査機関対医療界の対立は各地の裁判所で展開されている。医療事故調をめぐる動きを踏まえながら、「医療」と「刑事捜査」の今後を考える。

 医療事故調医療安全調査委員会) 医療事故が疑われる死亡事例で、刑事捜査に優先して専門家らが原因究明する組織。航空・鉄道事故調査委員会の医療版。当初政府は、今年の通常国会(終了)に法案を提出したい考えだったが、あり方をめぐるさまざまな意見があり、まとまるまでに至っていない。http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/080820/trl0808202223017-n1.htm

7月29日、自民党の「医療紛争処理のあり方検討会」が開かれた。席上、座長の大村秀章衆院議員は、救急救命に関係した医療事故に限定して医師らの刑事責任を免除するという刑法改正の私案をぶち挙げた。大野病院事件が立件されたことで、「最善を尽くしたつもりでも逮捕されるのでは、医療が成り立たない」と萎縮(いしゅく)している医療界にとっては心強い制度だ。大村座長は興奮気味に続けた。「医療事故調医療安全調査委員会)構想に懸念を示す一部の医師もこれなら乗れる。医療事故調の設置法案とセットで国会提出したい」免責範囲を救急救命に限定したのは、専門領域以外の重篤患者に緊急処置をする必要があり、事故と隣り合わせだからだ。当然、他の診療分野や被害者や遺族からも反対の声があがるだろうし、現行法体系を崩し、医者に“特権”を与えることには法務省の反対も容易に想像できる。「法務省は渋い顔をしていた。簡単に通るとは思っていない。劇薬だが、こうでもしないと医療事故調設置の話が前に進まない」と、大村座長は刑事免責の必要性を強調する。

■   ■ 医療死亡事故の原因や再発防止を、刑事捜査に優先して専門家らが調べるという「医療事故調」構想が実現すれば、医療機関は医療事故の届け出を、警察ではなくて事故調にすることになる。その場合、刑事責任はどうなるのか。そこが曖昧(あいまい)なことが事故調の設置法案提出が見送られている最大の要因の一つだ。7月28日に日本医学会が東京都内で開いたシンポジウムで、日本外科学会の高本真一理事が法務・警察機関との協議経過を明かした。「当初、警察庁は『医療事故調で調べた全事例を警察に報告せよ』と主張していた。その後、協議を重ね『重大な過失や故意』の事例だけを通報することになった」。大野病院のようなケースなら警察へは通知されず、刑事責任は問われないことになるという。しかし、会場からは「『重大な過失』の判断基準は何か?」「密室で法務・警察と協議しないでほしい」「事故調の結論が、捜査機関に渡るのはおかしい」といった疑問や批判が相次いだ。

■   ■ 医療事故調問題に積極的に発言している自治医科大の瀬尾憲正教授(麻酔科学)はこう考える。「医療は人の疾病をよくしようという行為。悪意のあるケースは別にして、失敗したからといって刑事事件にするのはおかしい」 一方、捜査側からみるとそれは「医療界のわがまま」に思える。 元浦和地検検事正で厚労省の医師再教育検討委員会の委員などを務めた清水勇男弁護士は、「法の下の平等を考えれば、医療界だけに捜査を甘くすることはおかしい」と指摘。「捜査機関は過去の医療事件捜査の過程で、カルテなどの証拠が改竄(かいざん)されたり、隠蔽(いんぺい)されたりした経験を痛いほどしている。医療事故調ができたとしても、刑事捜査はそこからの報告を待たずに始められるべきだ」と話す。 萎縮や崩壊を招かないためにも、刑事捜査を意識せずに医療に集中できる環境がほしい医療者側と、罪は罪として粛々と立件していきたい検察側。隔たりは小さくない。 警察庁の統計によると、平成9年には9件だった医療事故の立件件数が19年には92件にも上っている。その背景には、医療事故をみる社会の目が厳しくなってきていることがある。刑事責任の追及より、原因究明を主な役割とする事故調がこうした社会の目にこたえることができるのか。課題は多い。つづくhttp://sankei.jp.msn.com/life/body/080821/bdy0808212139004-n1.htm

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