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2008年7月19日 (土)

★小説 警視庁薬物特命捜査官(11)

 被害者は中国残留孤児だった

080713_164028_m 鬼頭と高橋の再会は、高橋が京都からの新婚旅行の帰りに東京で途中下車し、警視庁を見学したあと鬼頭夫妻と四人で銀座で食事をした以来だった。
 「特命捜査官だろう。例の事件で動いているのかね。生安には情報が入っていたぞ」
 鬼頭は内緒で仙台に来たはずなのに高橋が知っていたのには驚いた。
 「さすがだな。そうなれば話しが早いや。誰か紹介してくれないかな。情報がなくて困っていたんだ」
 「なに言ってるんだよ。察庁から本部長に既に電話が入っていたぞ」
 既に分かっていた高橋は、生安の保安係長をこの場所に呼び出していた。まもなく徳倉係長が駆けつけた。名刺を交換しながら徳倉が話し出した。保安係長と聞いて鬼頭は、納得した。
 「徳倉です。初めまして。実は、昨夜遅く分かったのでマスコミには、まだ発表していないのですが、殺されたのは朴こと金山剛と言って中国残留孤児のようなんです。東京の港区に事務所を構えているらしく、今、裏をとっている最中です」
 一呼吸をおいて徳倉は、さらに続けた。

 

 「前もなく紋(指紋)では割れませんでした」
 高橋は黙って聞いていた。鬼頭が言った。
 「朴。金山剛。どうして割りました?」
 「それが、たれ込みなんだよ。市警の交換台に言ってきて、すぐ切れたらしいんです」
 今度は、高橋が口を開いた。
 「本庁には連絡してあるので(確定には)時間の問題だと思うぞ。それにしても、殺しなんて東京では年中あるだろうが、なにしろ田舎県警だから…もう、大騒ぎだよ」
 鬼頭には「田舎」という言葉にいやみを感じた。「オレの出身県なのに…」と言いたかったが、高橋は知っていてわざと言ったのだろうと思った。高橋も同県人だからだ。
 「それより、早く挨拶に来たほうがいいのではないか?。本部長が気にしていたぞ。なんか察庁の課長さんとは同期らしいな。それで『おまえらの足下にも及ばない専門官が来るぞ!』なんて自慢していたぞ」
 高橋のその言葉に鬼頭は照れた。大まかな内容を聞いた鬼頭がホテルに帰ったのは十一時を過ぎていた。

 風間にこれまでの情報を入れ、県警に挨拶に行く了解をとろうと思った。その時、携帯が鳴った。風間からだった。
 「鬼頭君!。今、話せるか?」
 「ちょうど理事官に電話をしようと思っていたところだったんですが、なにかありましたか?」
 「うん、共助からの連絡で仙台の死体がな、どうもこっちに足があるらしい。確認をとっている最中だが、それで明日は捜査本部に行ってくれないか。察庁の重森課長が既に伊藤本部長には伝えてあるらしいぞ。二人は同期らしいんだよ」
 「私もそのことを伝えようと思ったんです。実は……」
 鬼頭は、今夜の牛タン屋での出来事を全て話した。
 鬼頭は、朝食を済ませて九時過ぎに捜査本部のある仙台市警察署に向かった。署は県警本部の近くにあった。鬼頭が署内に一歩、足を入れて驚いた。蜂の巣を突っついたような騒ぎになっていた。

 広瀬川で水死体で発見された人物が東京の人間だったことが正式に判明したが、その内容が毎朝新聞の朝刊に載っていたからだ。
   広瀬川の水死体は東京の古物商
     覚せい剤取引のもつれか
       背後に暴力団の陰も
 縦と横と併せて三本の見出しが社会面トップで踊っていた。
 「なんでマスコミに漏れるんだよ。ったく。しかも、報告よりも詳しいじゃぁーねーかよ。どういう事なんだよ…」
 「捜査一課長に聞かれたんだが…。俺のほうが聞きたいぐれぇだよ」
 副署長席で武和署長のグチが署内に轟いていた。鬼頭は「まずいところに来たな」と思った。既に徳倉保安係長が待っており、鬼頭の姿を見るなり、署長の背中を押して署長室に入って行った。鬼頭はその後ろに続くように部屋に入った。武和署長の表情は先ほどと違っていた。鬼頭を笑顔で迎えてくれた。
 「鬼頭さんですか。お待ちしておりました。しかしなんですなぁー。東京では激しいのでしょう? マスコミってやつはすばしこいのなんのって…もう漏れてしまいました」と武和署長。鬼頭にとってそれは「東京で漏らしたのだろう」と言うように聞こえた。
 「いつもの事ですよ」
 鬼頭は平静さを装った。
 まもなく市警四階で記者会見が開かれた。
 「捜査一課長は時間が取れないので代わって私が発表させていただきます」
 武和署長は、苦虫をかんだような表情だった。
 「え~今朝ほど毎朝さんが特ダネを書きましたが…、被害者は東京都港区高輪在住の男でございますのですが…」
 なんとも歯切れが悪い署長会見のスタートだ。しばらく考えた後、武和署長は配布した広報文を淡々と読み上げた。そして、こう言った。
 「これ以上については捜査中ですので申し上げられません。と言うより言えないと言った方が正解かな…とにかく、これ以上は何も判らないんです」
 「毎朝に書いてあるのは事実か?」
 最前列に陣取った古参記者が聞いた。抜かれた腹いせに確認したのだろう。
 「それは毎朝さんに聞いて下さいよ」
 古参記者の声が裏返った。
 「聞けとか聞かないとかでなく、捜査本部としてもそのような情報を持っているかと聞いているんだよ」
  古参記者はさらに食い下がった。
 「覚せい剤取引は本当か? 暴力団絡みなら四課を入れるのかよ。増員するのか、しねーのか、ハッキリ言えよ」
 鬼頭はビックリした。「どっちが偉いの?」と記者の人間性を疑った。武和署長も負けてはいなかった。
 「現在…身元確認のため捜査員を東京に出しているんだ…」
 署長の声に怒りを感じたのか、会見場はしばらく沈黙が続いた。
 「金山は仙台には時々来ていたのですか?」
 ひときわ甲高い女性の声が後ろのほうから響いた。
 「今、質問した社はどこ?」
 武和署長が立ち上がるようにしながら首を左右に振った。ダチョウが獲物を探すように目をきょろきょろした。
 「はい、毎朝の小橋詠子と申します」
 「見たことがない顔だが、幹事さん、良いのかな」
 記者会見とは記者クラブ加盟社のみに与えられた特権である。通常はクラブ員のみの参加が許されているのだが、全国面を賑わすような大きな事件になると本社からの応援記者も、時々やってくる。
 部外記者は、通常は遠慮がちに会見場の後ろに控え、質問なんてしないことが暗黙の了解になっているはずだ。
 毎朝の小橋という女性は無遠慮に質問したため、古参記者の面目もあるだろうと、武和署長が確かめた。
 「クラブ員以外の質問はやめろよ>」
 幹事社である地元の仙北新聞社会部記者が詠子の質問をけん制した。良く見ると、さきほど質問した古参記者だった。
 小橋詠子は毎朝新聞の警視庁詰め記者。隅田川に浮いた水死体の事件を担当していたが、仙台の水死体の事件では外部からの垂れ込み(情報提供)で東京社会部が特ダネを書いたこともあり、応援のため派遣したのだった。
 詠子は、捜査一課担当だが将来は警視庁初の女性キャップにさせるのが同社の方針だ。現社会部長も警視庁キャップ出身。これまで女性記者といえば家庭面か文化面、あるいは芸能面担当記者だったが、今では社会部にも十人以上の女性記者がおり、社会部長に女性が就任する日もそう遠くはない状況にあった。詠子はその筆頭候補だという。
 隅田川の水死体発見時の初動取材でも詠子は他社より一歩、抜きん出ていた。さらに、九州南西海域不審船事件でも同社は携帯電話の存在と販売先をいち早く突き止め、特ダネ報道している。いずれの原稿も社会部だった。
 記者会見を終えた詠子は、署の外に出て玄関付近で携帯で本社と連絡をとっていたその時、詠子の脇を擦り抜けるように通った一人の男に気づいた。
 「あれっどこかで見た記憶がある」
 そう直感した詠子はその男を追った。が、男の姿は無かった。つづく

http://www.police-ch.jp/video/16/

http://www.police-ch.jp/video/16/000411.php

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