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2008年7月25日 (金)

★小説 警視庁薬物特命捜査官(12)

   水死体メモの携帯が判明

080713_164028_m 捜査本部の調べで、金山剛の人定が少しずつ明らかになった。
 一九五四年に中国の広州に生まれた残留孤児。昭和五十七年に父方の実家である宮城県角田市で市民権を得て帰化。母親とは平成二年に死別したが、現在は妻と子供の三人で東京都港区高輪四丁目の高級マンションに住み、港区新橋で古物商を営んでいる。
 高輪のマンション住民の評判は「いつもにこやかに挨拶し、奥さんとも仲が良く明るい家庭のご主人」と評価は高い。
 その一方で、店舗先には古物商にも係わらず古銭や掛け軸など数点が飾られているだけで、繁盛しているとはとうてい思えなかった。
 しかし、乗り回しているのは赤いアウディ。3ナンバーの高級乗用車。古物商仲間からは、かねてから暴力団との交際の噂も取り沙汰されていた。
 その男が仙台市内で水死体で発見され、覚せい剤の注射恨まで確認されたのだ。遺体発見当時所持品が少なかったため身元の判明まで時間がかかった。
 捜査本部は、金山が乗っていた自動車の存在が掴めなかった。運転免許証ごと無くなっているのだ。東北縦貫自動車道の仙台周辺の料金所で料金表の指紋割り出しに全力をあげることになった。
 警察庁が調整に乗り出し、東京から宮城県までを含めて、行動確認が必要なアウディについては宮城県警の担当とし、「品川330××…」の車両番号で、Nシステムの分析作業を進めるよう指示した。
 一方、金山の所持していた不審な携帯番号については、隅田川の水死体が所持していたメモと同一番号だったこと。割当てがドコモ東海だったことなどから総合的に判断して、既に警視庁の担当とし捜査が進められていた。
 これまでの捜査で、判明しているのは、「1・8・6・0・7・0・5・3・8・8・×・×・×・×」を解明した結果、番号通知にする「186」を除き「・」を削除すると、070・5388・××…となり、「070」の携帯電話番号と判明。さらにその後の捜査で「070」で始まる番号は「PHS」携帯で、「070・5388…」の番号はドコモ東海への割当てだったことも分かった。
 警視庁では、刑事訴訟法第百九十七条の「捜査に必要な取調」の第二項「捜査については、公務所または公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる」に照らして照会した結果、この携帯は、大阪市生野区巽中××在住の韓国人留学生(一九歳)が購入、使用していることになっていた。
 警視庁は大阪府警の協力を得て留学生を割り出し、本人確認法違反で事情聴取を行った。
 府警の調べに対して留学生は、学校の講演で顔見知りとなった中国人で「伯」という〝先生〟から「携帯を買ってほしい」と頼まれて名古屋市内の携帯電話ショップで計五台を自分名義で購入。うち一台は謝礼として貰ったものの、他の四台は、伯に渡し、謝礼として二十万円、今後の通話料金として三十万円の計五十万円を受け取っていた。その四台の中に「070・5388・×・×……」の携帯が含まれていた。
 警視庁は留学生の証言などに基づき「伯」の特定捜査を進めた結果、東京都新宿区歌舞伎町の朝洋商事の社員であることを突き止めた。朝洋商事は、撃沈船から押収された携帯の発信記録に残っていた会社だ。
 公安関係の資料によると伯は、昭和五十八年前後に商事に入社。最初は営業部門を担当していたが、現在は非常勤役員とし、海産物研究員や資源調査員の肩書きを持ち、貿易関係評論家として、国内外で活動していることが確認されている。
 

鬼頭は、風間理事官からの指示もあり県警の警備、刑事、生活安全部の各幹部への挨拶回りのため県警本部に向かった。県警本部では機動捜査隊員の高橋が待っていた。
 最初に紹介されたのは生活安全部長の斉藤だった。斉藤部長に案内され県警本部長室に向かった。
 本部長室では、伊藤本部長が笑顔で迎えてくれた。
 「やぁどうも。よくいらっしゃいました。重森からお名前は聞いています」
 伊藤の厳つい顔がほころんだ。斉藤部長も高橋も初めて見る本部長の笑顔だった。
 警視庁の特命捜査官とはいえ身分は警部にすぎない。それが警視長の県警本部長までの出迎えを受けるとは、階級関係の厳しい警察社会ではあり得ないことだ。
 これも、警察庁の重森薬物対策課長のおかげと鬼頭は感謝した。伊藤本部長は、重森課長と同期入庁組みで警察庁の交通企画課長からの就任だという。
 斉藤部長は、戦時中の昭和十九年生まれで鬼頭とは同年齢。仙台市と隣接する塩釜市の漁師の家に生まれたが、警察官にあこがれ勘当同然の扱いを受けて実家を飛び出した男だった。お茶を飲みながら三人の会話は弾んだ。高橋は時間が気がかりだった。
 「殺しは私も担当していましたので、金山の実家がある角田市に行きませんか?」
 本部長室を出た高橋が鬼頭に聞いた。
 「そうだなぁ…見ておいたほうが良さそうだな」
 「私もそう思います。それに実家の確認は角森警察署には連絡しているはずですが、捜査の実質的な指揮官としての鬼頭さんにとっても実査しておいたほうが良いのではないですか」
 「いゃ、別に…指揮官ではないよ、オレは」。少しの間をおいて鬼頭が言った。 「角田市か。実は俺の母親の墓がある田舎の近くでね…」
 県警本部を出た二人の足は仙台市内の広瀬川の死体発見現場に向いていた。
   ×       ×      ×        ×
 歩きながら高橋は鬼頭に話しかけた。
 「鬼頭さんの田舎は角田だったのですか?」
 「いや違う。隣りの隣りとでも言おうかな」
 「なんで警察官になろうとしたんですか?」
 高橋は、鬼頭を「師」と仰いでおり警察大学時代から、どうしても警察官になった動機を聞きたかった。
 「俺が警察官になるんだと決定づけたのに小学校四年生時の出来事があるんだが…。個人的な問題だよ。それはな…。ちょっとな…」
 「日本警察の財産とされる特命捜査官である大先生が、警察官になる志を決めた話しを是非、聞かせて下さいよ」
 初めは渋っていた鬼頭も、次第に話し出した。
 「小学校はひどい木造でな。三年生までの担任の先生は女先生だった。四年生になって五十歳代の男先生に代わったんだよ」
 「この男先生は佐久間孝治と言って、当時の県教育委員会の間では転勤拒否者で有名な頑固先生。日教組のパリパリさ。で、子供達は勿論のこと父兄会からも、担任に当たらないようにと嫌われ者の変人だった」
 鬼頭は、学校まで歩いて三十分以上もかかる山あいに住んでいた。四歳の時に引っ越してきたが僅か十五軒足らずの地区であり地区民たちとはすぐ打ち解けられたという。話しはさらに続いた。
 「当時の自動車は木炭車からガソリン車になったばっかしかな」
 「村の産業といえばよ繭の生産なんだ。繭って知ってるかね」
 「知ってますよ。おカイコサンと呼ばれるやつでしょう」
 「そう、蚕は自らはき出す糸で繭の中に閉じこもり、サナギになるんだ。その糸が絹糸さ。蚕の餌となるのは桑の葉だ。村の斜面には多くの桑畑が点在したよ」
 「私たちの時代は、そのサナギで魚を釣る時代ですよ」
 そうだ、高橋は静岡県清水市の出身だった。清水港の岸壁でのチヌ釣りには良くサナギが利用される。日の出ふ頭が好釣り場だ。東海地区の釣りキチには有名な話しだ。
 二人は定禅寺通りを歩いていた。
 「米を生産する田んぼで生計を維持する農家は僅かだったな。とにかく典型的な山間地さ。多くの働き手は農繁期には隣村に手伝いに行くか、周辺地域の土木作業や木材の切り出しなどで生計を維持するしかなかった。秋口から春先にかけては炭焼きだ」
 四歳の鬼頭を連れて実家を飛び出した母親は、鬼頭を親類の家に預け出稼ぎに出て、一ヶ月に一度は我が子に会いに来る日々をおくっていた。
 昔を語る鬼頭の顔は、生き生きとしているようには見えなかった。むしろ逆で、時々顔をゆがめた。高橋は鬼頭は何かにおびえているように感じた。つづく

http://www.police-ch.jp/video/16/

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